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2025/8/24 22:50 |
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第3回
![]() ![]() リプレイス大作戦その1~石炭の代替
・はじめに「海外流出マネーを地方に取り戻す!」 私は第一回目のコラムで「地方創生」をやりたい、と書きました。一般的に地方創生といえば、地元の特産品を売り込んでいく、地元の風光明媚は風景、美味しい食材をアピールし、観光業を盛んにしていくといった手法が取られると思います。それはそれで正しい事だとは思いますが、残念ながら日本の飲食、観光業は一人当たりGDPが最も低い産業なのです。こんな事ばかりしていては地方に仕事はできるかもしれませんが、どんどん貧しくなっていってしまいます。(第二回コラムに書いた「年収が少ないと結婚率が少ない」法則によると少子化でいずれ地方は滅亡します)
そこで、私の考える地方創生はズバリ、「海外に流出しているマネーを地方に取り戻す!」ということです。例えば、2022年度の財務統計を細かく見ていって集計したことがあるのですが、①化石燃料とその製品(炭酸ガス、ナフサ、メタノール、LPガス、・・・)代金は年間35兆円!こんな多額なマネーが海外に流出しています。②食料:年間10兆円、③木材と木製品:2.3兆円、つまり、合計で47.3兆円です。
日本政府から地方へ配られる地方交付税は年間18兆円ですから、化石燃料、食料、木材の海外流出マネーを地方に取り返すことができたなら地方交付税の2.6倍ものお金が地方に向かいます。そして、経済波及効果が3.1倍(再生可能エネルギーの場合、林業や木材産業はもっと経済波及効果は大きいと言われています)だとすれば、150兆円近い莫大な金額の地方経済効果がもたらされます。
かつて資源の無い日本は資源を輸入し、付加価値を付けて海外に輸出する事により外貨を獲得(加工貿易といいます)、莫大な貿易黒字を稼いで戦後復興、世界第二位の経済大国になりました。
しかし、それはもう昔の話しとなってしまいました。かつて、世界最長射程の巨大戦艦大和を造れた造船業、日本の稼ぎ頭だったテレビ、ノーベル賞も獲得したリチウムイオン電池、電子立国ニッポンと言われた半導体、日産が世界で初めて量産型電気自動車リーフを市場に投入しましたが、これも現在米国テスラ、中国BYDに遅れを取ってしまいました。しかもリーフは未だに蓄電池起因の電池火災は起こしていないのにこの有様です。燃料電池車もトヨタが世界初の量産型燃料電池車ミライを発売しましたが、現在は韓国の現代に出荷台数で負けています。
多くの基幹産業において日本企業の優位性は消滅してしまいました。これにより日本の貿易収支は赤字が常態化、金融やITで出遅れた日本はサービス収支も赤字が常態化、経常収支は黒字ですが、稼いだ外貨は再投資されてしまう為、日本にマネーは還流せず、みずほ銀行の唐鎌大輔氏はキャッシュフローベースの経常収支は赤字ではないか、と指摘されています。今後日本は何で外貨を稼げば良いのでしょうか?もはや日本の加工貿易ビジネスモデルは世界に通用しなくなってしまいました。
また、米国ではトランプ政権が誕生し、貿易収支で稼がせてもらう事もかなりやりにくくなってしまいました。日本は加工貿易に代わるビジネスモデルを再構築する必要があります。それが私の提唱している「海外流出マネーを地方に取り戻す」ビジネスモデルです。
こういうのが構造改革だと思うのですが、失われた35年でこうした案は聞いたことがありません。米国は関税で強権的に貿易収支改善に動いていますが、日本は技術、知恵、協力体制でこれら海外流出マネーを地方に取り戻していきたいですね。
47.3兆円もの輸入資材を国内資源で代替(リプレイス)するという壮大な構想ですので今回からは何回かに分けてご説明していきます。私はこれを「リプレイス大作戦」と呼んでおり今後多くの企業様と取り組めるよう頑張りたいと思っています。リプレイス大作戦のその1は「石炭の代替」です。多くの環境団体からも指摘があるように極めて温室効果が高く地球温暖化という観点からも石炭代替は求められていることです。
・石炭は何に使われているのか? 日本の部門別の二酸化炭素排出量はどうなっているのか見てみましょう。 ![]() 最も多いのがエネルギー転換部門です。エネルギー転換部門とは発電事業、製油事業などが含まれます。発電事業の中で最も二酸化炭素排出量が多いのが「石炭火力発電」です。
次に多いのが産業部門です。産業部門で二酸化炭素排出量が多いのが鉄鋼業です。 ![]() 特に石炭を大量に使用する高炉製鉄業が最も多くなっています。
他に石炭を使う産業は、高炉製鉄以外の金属精錬事業。これは金属を硬くするために石炭コークスを混入させます。スクラップ鉄を原料にした電気炉製鉄、鋳物工場、その他非鉄金属産業で使われます。高炉製鉄以外では一部、木材や非可食植物由来のバイオコークス、廃プラスチックのような有機廃棄物が利用され始めています。
石炭火力に関しては発電や電力システムという観点で別途ご説明したいと思います。そこで詳述しますが、石炭火力は日本国内資源(再生可能エネルギーと蓄電システム)だけでリプレイス可能とだけ今回は記述しておきます。
・高炉製鉄=産業界最大の二酸化炭素排出産業 高炉製鉄とは高炉という炉内に投入した鉄鋼石(酸化鉄)を石炭の燃焼熱で高温にして、石炭コークス(石炭を蒸し焼きにして炭素重度を上げた石炭)で還元し、石炭コークスの一部を製品(鉄鋼製品)に溶け込ませることで鉄鋼製品を作る産業です。鉄鋼とは鉄と炭素の合金の様なものなのです。
高炉ではこのように石炭コークスが「昇温」(温度を上げて鉄を溶かすこと)、「還元」(鉄鉱石(酸化鉄)から酸素を奪う事)、「加炭」(溶鉄に炭素を添加すること)の3つの機能を持っていることに注意して下さい。
高炉製鉄の問題は昇温、還元、加炭全てにおいて石炭に依存している為、大量に石炭を使う事になっていることだと思います。
製鉄には200年程前までは木炭が使われていました。その技術の起源は紀元前17世紀、現在のトルコのアナトリア地方に存在していたヒッタイトで発明されました。大量に木材を消費し、次々と森林を破壊し、約2000年かけて日本に伝わりました。このヒッタイトから日本に伝わった経路はアイアンロードと言われています。シルクロードよりも歴史は古く、アイアンロード沿いの中央アジア諸国では未だに森林は回復せず不毛な地域になってしまいました。大面積の森林を壊滅させる、それくらい製鉄には多大なエネルギー、資源が必要なのです。 ![]() 話しは脱線しますが、私の住む岐阜県飛騨地方には古事記や日本書紀と内容が若干違いますが詳しい口述伝承神話があります。その中には鉄が日本に伝わった話もあります。
古事記ではヤマタノオロチ伝説で有名ですが、飛騨地方の伝承はもっと現実的です。
「大陸からオロチョン族という民族が出雲地域に進出し、鉄を取って、武器を作り、乱暴狼藉を働いていたので当時の飛騨国王だったイザナギノミコト(妻のイザナミノミコトは出雲出身だった)に援助要請が来て、息子のスサノオを派遣した。そのスサノオはオロチョン族に酒を飲ませて寝ている時を襲い、製鉄技術と草薙剣を得た。」とあります。
真偽はともかく日本の天皇家が製鉄技術を得て、他の日本国内の国王から頭一つ抜き出たのは他の古代史研究でも確かなようです。おそらく三種の神器にもなっている草薙剣は製鉄技術という権力の象徴だったのでしょう。
飛騨高山の町中にはスサノオの義理の父であるアシナガ、義理の母であるテナガの像が鍛冶橋という製鉄業に関係の深そうな名前の橋に建立されています。 ![]() 岐阜県高山市の鍛冶橋にあるアシナガの像
高炉製鉄へのバイオコークスの適用を研究されている産総研の鷹嘴先生にお話しを伺いました。現時点ではバイオコークスを高炉製鉄で使う事はできないとのことでした。高炉の中には層状に5cm程度の大きさの石炭コークスと鉄鉱石をミルフィーユの様に積み上げて着火します。石炭コークスは高温になっても型崩れせず適度な隙間がある状態を維持します。この隙間から発生したガスが上に抜け、融けた鉄が下に落ち、高炉製鉄が行われます。バイオコークスにはこの「硬さ」が不足しているそうです。隙間が粉々になったバイオコークスで塞がれてしまったら、高炉が内部閉塞を起こし、高炉が停止してしまうそうです。
現在、産総研や複数の大学で「硬い」バイオコークスの研究や開発は行われているもののまだまだ実現は先になりそうですし、現在の案を聞いていると経済的に成立しないのではないかと思います。また量も膨大で現在の木材生産量を3倍にしないと間に合わないので私の考えでは実現は難しい、もしくは、高炉を大幅に削減し、少ない高炉だけに適用するということしかないかな?と思っています。
むしろ、高炉製鉄は高炉ではなく、還元と加炭は水素と二酸化炭素で行い、昇温は電気で行う方式が良いと思いました。この予備還元&加炭電気炉製鉄は元川崎重工理事で1980年代から水素還元製鉄の特許を複数出されている堤水素研究所の堤香津雄さんという方が提案されています。
水素は電気による水電解で得ます。電気は電力卸市場価格が0.01円/kWhと最低価格の時間帯が太陽光発電の普及により多くなってきていますので、この時間帯の安価な電力を使えば良いでしょう。二酸化炭素は高炉の後工程の転炉工程(二次製錬)で副製品として得られます。転炉工程では不純物を除去する為に消石灰が必要なのですが、消石灰は石灰石を蒸し焼きにして作ります。この時大量に二酸化炭素が出ますのでこれを使えば良いと考えます。
したがって、高炉製鉄における石炭代替は日本で自給された再エネ電気と石灰石(日本で自給可能)で代替すればよいと考えます。再エネ電気の自給は別のコラムでご説明します。
・残る石炭代替 石炭火力も高炉製鉄も日本国内で自給できる再エネ電気と石灰石、石灰石を蒸し焼きにする時に発生する二酸化炭素で代替できるなら、それで話しは終わり、ということにはなりません。(確かに大玉ですが)。スクラップ鉄、鋳物工場、非鉄金属製錬工場、では加炭材として、その他産業用途としては例えば農業の土壌改良剤で炭は必要です。
一部で既にバイオ炭、バイオコークスが使用されていますが、コストの問題で大きく普及していません。その理由は歩留りの悪さです。
二酸化炭素も水蒸気も酸素も存在していない理想の状態で1000℃以上に加熱すると木質バイオマスは下記の様に熱分解します。 C₁₃₈H₂₀₀O₈₀(木質バイオマス)→58C+80CO+100H₂ つまり炭素と一酸化炭素と水素に分解します。
ここで歩留りを計算してみましょう。炭を作る人、企業、業界の人の多くは発生するガスを燃やして捨ててしまっています。 (炭素:58×12)/(木質バイオマス:138×12+200+16×80)=696/3136=22%
実際には酸素や水蒸気、二酸化炭素があるのでもう少し炭素は少なくなります。下記反応の為です。 ・水蒸気改質反応:C+H₂O→H₂+CO ・二酸化炭素改質反応:C+CO₂→2CO ・単なる酸化:C+O₂→CO₂ したがって理想通り22%も歩留りがあるかといえば、上記の反応がありますから、そうはなりません。歩留りが2割程度以下では採算を取るのは難しいでしょう。
一方で、木質バイオマスの熱分解ガスである水素と一酸化炭素が必要なのが化学産業です。
一酸化炭素と水素の合成ガスはシンガスと呼ばれていて、昔は都市ガスに使われていました。現在の60歳以上の人はテレビのニュースで「一酸化炭素中毒で人が亡くなった。」とよく子供の頃聞いたことがあると思います。昔は国内で自給できていた石炭を水蒸気改質反応で水素と一酸化炭素を作り出し都市ガスにしていたのです。今の都市ガスは天然ガス(LNG:液化天然ガスで全量輸入)で主たる物質はメタンですので安全です。
また、このシンガスが凄いのは合成すると原油ができます。これはFT合成という化学反応で、戦前はABCD包囲網で日本は原油の輸入ができませんでしたから、人造石油と言って日本国内で売られていました。
つまり、炭が必要な金属産業とシンガスが必要な化学産業が協力すれば歩留り100%で炭と一酸化炭素と水素が得られるのです。また、昨今は一酸化炭素と水素から原油ではなく直接ジェット燃料やメタノールなどの化学基礎品を直接作ってしまう触媒が開発されています。こうすれば木質バイオマスから炭、SAF(持続可能な航空燃料、高値で相対取引されている)、メタノール(現在日本国内自給率は0%、年間900億円の輸入額)が生成できます。
また、三菱ガス化学という会社は現在原油から精製されるナフサ由来のマテリアル系化学産業をメタノール起点のマテリアル系化学産業に転換しましょうという構想を発表されています。(マテリアル系化学産業とは樹脂、合成ゴム、薬品、塗料、など燃料以外の化学産業、対して燃料系化学産業はLPガス、都市ガス、灯油、ガソリン、ジェット燃料、経由、重油、など燃料)
下記、MGC(三菱ガス化学)の環境循環型メタノール構想。 ![]()
世界の製鉄産業の市場規模は350兆円、化学産業の市場規模は400兆円もあります。日本の新しい技術で市場シェアを取れるといいですね。
・石炭代替→金属加炭材代替、農業土壌改良炭、ナフサ代替、ジェット燃料代替 今回のリプレイス大作戦その1は石炭代替で検討してきましたが、大物の石炭火力と高炉製鉄が電気と二酸化炭素で代替できてしまうことから、石炭代替というよりは下記代替で考えた方が良いでしょう。 ① 金属加炭材代替(金属を硬くする石炭コークスをバイオコークスで代替) ② 農業土壌改良炭(農業の土壌改良にバイオ炭を積極的に使っていく) ③ ナフサ代替(マテリアル系化学工業の起点であるナフサを木質バイオマス由来メタノールで代替) ④ ジェット燃料代替(原油から生成されるジェット燃料を木質バイオマス由来の一酸化炭素と水素から特殊触媒(富山大学椿教授)のFT合成により、SAFを合成する)
いずれにしても大半の石炭は木質バイオマス、再エネ電気、二酸化炭素、日本国内で調達可能な資源で代替できてしまいます。
重要なことは木質バイオマスを歩留り100%で使うということです。炭だけ取って後は燃やしてしまう、とか、ガスだけ取って炭は捨ててしまう、では採算を取ることは難しいでしょう。
実は木質バイオマスガス化発電は後者です。高山市のしぶきの湯という温浴施設にある木質バイオマスガス化発電コージェネレーションシステム(ドイツのブルクハルト社製)の焼却灰の80%は炭で、現在は捨てているのです。私の住んでいる飛騨市最大の企業の神岡鉱業(三井金属100%子会社)調べです。現在の木質バイオマス発電は問題が多いのでこれも別途当コラムで取り上げます。
・木青連の皆様へ バイオ炭やバイオコークスの製造、活用、など木材業に関わる人はおそらく一度は考えたことがあるのではないでしょうか?そして、事業化された方もいらっしゃると思います。しかし、現時点で大きく普及していない原因はコストの壁がなかなか崩せないということだと思います。私の提案(炭とSAFとメタノール製造を同時に行う)もコストの壁を崩していないかもしれませんが少しは近づいていると思います。しかしながら単独でやっていくのはまだまだ難しい分野ではあります。多くの木材関連企業が連携し、既存の大企業や行政を巻き込まないと大規模な社会実装は困難だと感じていますが不可能ではありません。
炭素税の導入による化石燃料由来炭素価格の上昇や円安による石炭価格上昇により、コスト差が無くなるかもしれません。また、こうした分野に三菱ガス化学、ENEOSのような大企業が参入してくれば、大幅に木材需要が増加します。そして、海外に流出している石炭購入マネーを地方に取り戻すことができるのです。(2022年度の石炭輸入額は8.4兆円)
こうした世界になる為に木材産業がやっておくことはたくさんあります。 例えば、上流から考慮すれば、 ① 森林所有権の集約化(施業や経営権の集約では不十分だと思います) ② 低コスト造林の推進(ノーコスト造林をめざすべきと考えます) ③ 素材生産性の向上(オーストリアやニュージーランド林業に追い付きたい) ④ 木材、食料、エネルギー自給率向上観点でふさわしい樹種の植栽 ⑤ 木材産業のコンビナート化、木材の大量かつ安定供給体制構築 など、たくさんあります。個々のテーマに関してはまたコラムで順次、詳細説明したいと思います。
また、炭や化学産業の原料になる様な低質材を安定供給する為にも建物に使うような製材品や合板などの生産も増やしておく必要があります。その為には「全ての建築物を木造にしよう」というような運動も必要でしょう。鉄鋼品とのハイブリッド木材も含めれば、全ての建物を木造にすることは技術的にも法律的にも可能となってきています。
こうした未来の林業を視野に入れた新しい林業のコンサルティング会社が2025年7月に誕生しました。株式会社KOSOです。私もアドバイザーで参画しています。木材産業界で有名な方で、早生樹、エリートツリー、補助金に頼らない林業を提唱されている元林野庁の大貫肇さんも経営者として参画しています。
以上、ご関心あれば下記までご連絡下さい。 宮本義昭:メールアドレス:ym00876216@gmail.com
(過去のコラム) 第一回:人手不足対策、地域の空き家問題対策、リフォーム事業拡大 【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第1回 - 日本木材青壮年団体連合会 ・海外人材紹介と定着サービス:フューチャーデザインラボ社のご紹介
第二回:少子化問題と木材産業の成長 【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第2回 - 日本木材青壮年団体連合会 ・中堅中小企業の売上利益拡大を支援:Revitalize社のご紹介
(所属企業、団体) 株式会社バルステクノロジー 代表取締役社長 兼 株式会社KOSO アドバイザー 兼 日本木材青壮年団体連合会 広報委員会アドバイザー 兼 株式会社Revitalize アドバイザー 兼 株式会社Dione アドバイザー 東京科学大学(旧東京工業大学)基金特別会員 プラチナ構想ネットワーク 法人会員 先進EP研究会 会員 Asagiラボ 賛助会員 東海バイオコミュニティ 法人会員 林野庁 森ハブ・プラットフォーム会員 東京丸の内イノベーションプラットフォーム林業分科会 蔵前バイオエネルギー 正会員
(拙著:代表作) |
2025/8/24 22:44 |
活動紹介 令和7年6月26日 日本木青連・4Hクラブ親睦会開催報告
![]() ![]() お世話になります。専務理事の杉山です。静岡会団から出向しております。どうぞよろしくお願いします。
令和7年6月26日、日本木材青壮年団体連合会(日本木青連)と全国農業青年クラブ連絡協議会(4Hクラブ)による親睦会が、東京・神田明神の鰻料理店「喜川」にて開催されました。 この親睦会は、他団体との連携をテーマに掲げた令和5年度・島田会長の時代から始まった取り組みであり、これまでは少人数での開催が続いてきました。今回はその流れを受け継ぎつつ、さらに一歩踏み込んで両団体の役員同士の交流を深めることを目的とし、参加の幅を広げて開催されました。当日は、日本木青連・4Hクラブからそれぞれ7名、さらに業界誌記者2名を加えた合計16名が参加し、にぎやかで活気に満ちた親睦の場となりました。 開会にあたり、乾杯のご発声を務めた長谷川会長は、 「農業も木材業も、自然素材を扱うという共通点があります。オーナー企業や家族経営が多い産業構造もよく似ています。つまり、私たちは同じような悩みや課題を抱えている仲間だと思うのです。さらに、主管省庁はどちらも農林水産省。そして、大臣は私たちと同世代の小泉大臣。これはもう、一緒に小泉大臣にご挨拶に行くしかありませんね!」 と、両業界に共通する特徴や背景をわかりやすく述べました。もともと接点の少なかった業界同士ということもあり、会の冒頭はやや緊張した空気が漂っていましたが、同じ一次産業を支える仲間として、和やかで前向きなムードの中、会は始まりました。 印象的だったのは、会の雰囲気の明るさと参加者同士の盛り上がりです。世代も近く、経営者としての共通点も多い両団体のメンバーは、初対面とは思えないほど打ち解け合い、趣味や地元での取り組み、経営上の工夫や課題に至るまで、実に多岐にわたる話題で大いに盛り上がりました。終始、笑い声と前向きな意見が飛び交い、場の一体感は非常に高まりました。 ここで4Hクラブについて簡単に紹介させていただきます。4Hクラブ(農業青年クラブ)は、20〜30代の若手農業者が中心となり、技術研鑽や経営改善、販路開拓などを目的に、地域密着型のプロジェクト活動を行っている全国組織です。現在、全国に約670のクラブがあり、約1万人の会員が在籍しています。地域活動や他団体との連携にも積極的で、農業界における若手ネットワークの中核を担う存在です。
今回の交流は参加者にとって大きな刺激になったといえます。ある4Hクラブ会員は日本木青連会員の特色ある事業活動に強い関心を示し、その場で会社訪問の約束を取り付けておりました。また、もっと木青連の会員と交流を深めたいと嬉しい声もいただきました。林業・木材業と農業という異なる業界でありながらも、自然素材を扱うという共通点を持つ両者が情報を共有し、互いの考え方や課題に触れ合うことで、新たな発見と刺激が多く得られた貴重な機会となりました。
今回の交流から、業界を超えた連携によって相乗効果を生み出す可能性が大いに感じられました。商品開発や地域活性化、持続可能な社会づくりといった未来志向の取り組みにおいて、今回のようなつながりが具体的な成果へとつながることが期待されます。
今後もこのような親睦会を継続的に開催することで、業界の垣根を越えた協働の輪が形成されること楽しみでなりません。互いの想いを交わし、業界の未来を語り合うこうした場が、木青連と4Hクラブ双方の活動をより力強いものにしていくと期待に胸を膨らませる会となりました。そしてひょっとしたら、両者の連携によって国や社会をも動かすような力が生まれるかもしれない。そんな可能性すら感じさせる希望に満ちた一夜となりました。
全国農業青年クラブ連絡協議会 |
2025/8/24 22:37 |
活動紹介 令和7年7月11日 公益財団法人住宅・木材技術センターとの意見交換会
![]() ![]() 令和7年7月11日、公益財団法人住宅・木材技術センター(以下「住木センター」)にて意見交換会開催しました。今回は同センター理事長であり、木青連の顧問でもある宮澤理事長のご厚意により実現したもので、オフレコの座談会ということもあり、参加者が気軽に発言できる雰囲気の中で進行されました。 冒頭では住木センターの成り立ちや沿革について紹介があり、同センターが果たしてきた役割や事業内容について理解を深める時間となりました。続いて宮澤理事長からは、現在の木材業界を取り巻く課題に関する率直な思いが語られ、「この業界を、真にお金の残る産業にしたい」という熱意が随所ににじんでいました。
また、法制度に関する話題として、クリーンウッド法や4号特例縮小についても触れられ、その概要や今後の展望についての説明をされました。会員たちからの多岐にわたる質問にも、理事長は一つひとつ丁寧に、かつ気さくに応じられ、まさに現場感覚と行政の橋渡しを実感する時間となりました。
見学の時間には、同センターが保有する構造・耐火試験場や銘木館を訪問。普段なかなか目にする機会のない試験施設を目の当たりにし、木材に携わる者として改めて素材の可能性や安全性への責任を実感する機会となりました。
特に銘木館では、数々の貴重な木材が展示されており、訪れた会員たちはそのスケールと歴史に圧倒されました。中には、大人の男性の身長をゆうに超える原木や、歴史上の人物が植樹したとされる板、古代のスギの根株など、木の力強さと奥深さを感じる展示が並んでいました。 銘木館の多くの所蔵品は、木青連会長・長谷川泰治氏の曽祖父にあたる長谷川萬治翁が全国から収集したものであることも紹介され、木材にかける情熱が代々受け継がれていることに一同深く感銘を受けました。 最後に、宮澤理事長より「長者番付日本一となったことのある萬治翁の銅像の靴を撫でると金運や商売運が上がる」というユーモア交じりの案内があり、なんと何人かの会員は真剣な面持ちで靴を撫で、商売運や金運をあやかっていました。その姿を横目に、結局は私も少しだけ靴を撫でてしまったことをここに記しておきます。 今回の訪問は、知見の深化のみならず、木材業界を志す若い世代にとって、大いなる刺激と学びを与える貴重な機会となりました。
公益財団法人 住宅・木材技術センター |
2025/8/24 22:21 |
大会活動紹介 第1回 東海地区大会
![]() ![]() 令和7年度 第49回東海地区協議会会員大会レポート
皆さま、こんにちは! 令和7年7月26日、三重県松阪市の華王殿にて、「日本木材青壮年団体連合会 東海地区協議会 第49回会員大会」が盛大に開催されました。令和7年度としては全国で最初の地区大会となり、注目度の高い開催となりました。 今年の大会テーマは「とにかく楽しい東海地区」 東海三県(愛知・岐阜・三重)の若手木材人たちが一堂に集まり、学びと交流、そして笑顔あふれる時間が流れました。 式典は午後3時30分に開会。冒頭、東海地区協議会地区長である三重県松阪地区青和会の川口大輔君が、「楽しいって色々あるけど、最も単純に、今楽しいを追い求めていただくことが、活動をより活性化させる!」と熱い挨拶を送り、令和7年度のスタートを盛り上げました。 続いて登壇したのは、日本木青連・長谷川泰治会長。令和7年度の活動について委員会報告があり、「来年度中に会員数1,000名を目指す」という力強い目標が示されました。参加者一同、全国の仲間たちとともにその実現に向けて歩む決意を新たにしました。 基調講演には、松阪市の「接骨院りゅうぼう」院長・中尾隆一様をお招きし、「いつまでもあると思うな、強い体!!」をテーマにご講演いただきました。現場で働く私たちにとって身近で切実なテーマなだけに、健康意識を見つめ直す貴重な時間となりました。 そして夜は、待ちに待った懇親会。華王殿自慢の料理がずらりと並び、参加者たちは舌鼓を打ちながら交流を深めました。メインイベントはなんと「松阪牛争奪・腕相撲対決」!愛知・岐阜・三重、日本木青連から1名ずつ選ばれた代表たちが、豪華な景品をかけて熱戦を繰り広げ、会場は大盛り上がりとなりました。 ![]() さらに、全員参加の「大じゃんけん大会」も開催され、こちらでも松阪牛が賞品としてかけられており、誰もが本気で勝負に挑む場面が続出!終始、笑顔と拍手が絶えない楽しい夜となりました。 締めの挨拶は、令和8年度の日本木青連会長予定者・田口房国君。 未来への期待を語ったあと、「やっぱり東海は楽しいですね!」と笑顔で話し、最後は東海地区の“公式?”テーマソングを全員で肩を組んで大合唱!感動と一体感に包まれながら、大会は最高のかたちで幕を閉じました。 なお、今回の会場では、これまでの金属製に代わる新しい「木製の木青連バッチ」が初めて販売されました。木の温かみが感じられる自然な風合いと洗練されたデザインで、参加者の注目を集めました。価格は1個1,300円。 胸に付けるたび、木に携わる誇りと仲間とのつながりを思い出させてくれる、新たなシンボルアイテムとなりそうです。 ![]() |
2025/8/24 22:13 |
木力NOTE ―木で未来をつくる人たちへ 第5回
![]() ![]() 第5回 日本木青連の心を歌う ― 会歌の誕生とその想い
こんにちは。日本木材青壮年団体連合会(日本木青連)会長の長谷川泰治です。 会長コラム「木力NOTE」の第5回です。今回は、日本木青連の“心”ともいえる「会歌」についてご紹介します。
日本木青連の会歌が誕生したのは昭和53年度(1978年度)、当時の片境啓一会長(第19代/富山)の発案によるものでした。企画担当常任理事・三箇優氏のもと、会旗や綱領と並ぶ団体の象徴として「会歌」および「木材音頭」が制作され、昭和54年5月19日に石川県で開催された第24回全国会員金沢大会にて発表されました。 ![]() <当時のレコードがまだ残っていました。レトロ感たっぷりです>
制作当時の三箇委員長は、大会記念誌で次のように述べています。 「片境会長より、木青連には会旗・綱領は制定されているが会歌がないので、企画委員会にてぜひ検討してほしいとの要望があり、委員会において重点事業と決定し、実現に鋭意努力してまいりました。日本木青連も今や全国組織となり、日夜木材並びに関連産業の発展にいそしんでおり、会歌の制定をみるに至ったことは、対外的にも心強いものがあると言えます。会歌の完成までにはタカエージェンシーの高塚氏に多大なご協力を賜り、ここに感謝の意を表します。願わくば、大会などの諸行事の都度、歌われることを祈念いたします。」
日本木青連会歌の歌唱を担当したのは、1958年に早稲田大学グリークラブ出身の4人で結成された、日本を代表する男性コーラスグループ「ボニージャックス」です。彼らは60年以上、日本のコーラス界を代表する存在として活躍していました。 NHK「みんなのうた」には約100曲以上が起用され、童謡・愛唱歌・フォークソングを中心に、レコーディング楽曲数は3,000曲以上。これは日本の音楽グループとして屈指の記録です。また、文部科学大臣賞や日本童謡賞特別賞など数々の栄誉を受け、その功績は音楽業界だけでなく教育・文化分野にも大きく貢献してきました。長年、全国の学校や地域イベントなどでも歌声を届け、日本の歌文化の普及と継承に力を注いできたグループです。日本木青連の会歌でも、温もりある声質と豊かなハーモニーが存分に活かされ、力強さのなかに優しさと誇りを感じさせる仕上がりとなっています。
作曲・編曲を手がけた山路進一氏は、放送音楽や社歌・校歌の分野で活躍した作曲家で、重厚な和声感と旋律の美しさに定評があります。日本木青連の理念、そして未来への誓いを音楽で見事に表現しました。また、高塚悦郎氏は、当時タカエージェンシーに在籍し、広告や音楽制作に携わるプロデューサーとして数々の文化事業を手がけ、日本木青連会歌の制作においても企画構成や歌詞協力など幅広く尽力しました。 以下が、その会歌の歌詞です。 ![]() 日本木青連 会歌 作詞:企画委員会(協力・高塚悦郎)/作・編曲:山路進一/コーラス:ボニージャックス
日本木青連の会歌は、3番までありますが、それぞれ、「心意気」「理想」「使命」という三つの柱が表されています。まず「心意気」では、木を生活を支える基盤として大切にし、その価値を社会や未来へ広げていこうとする姿勢が歌われています。次に「理想」では、全国の仲間たちが互いに学び、協力し合いながら、木の文化を受け継ぎ発展させていくことが示されています。最後に「使命」では、若い世代が、知恵と情熱をもって次の社会を築いていく責任がうたわれています。このように会歌は、木材に関わる者としての誇り、仲間との連帯、そして未来への責任が三つに分けて力強く表現されています。
日本木青連の活動理念が詰まったこの会歌は、会旗や綱領と並ぶ精神的支柱といえる存在です。三箇委員長の願いどおり、現在も理事会や大会式典の冒頭ではこの会歌が歌われています。その旋律や音源には昭和の時代を感じさせる部分もありますが、それもまた歴史の一部として味わい深いものです。今後、時代に合わせて表現の見直しが求められることがあるかもしれませんが、歌詞に込められた理念や魂は、これからも大切に受け継がれていくべきものだと感じています。
木青連会歌の音源はこちらになります。 |
2025/8/12 2:01 |
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第2回
![]() ![]() 少子化問題と木材産業の成長
・はじめに 前回、人手不足問題に触れました。何故、人手不足になるかといえば、急速に労働人口が減少しているからでした。労働人口が減少している原因は少子化です。 ![]() 上記は前回と同じグラフですが、1955年に3012万人だった14歳以下人口が2025年(推計)で1324万人と57%も減っています。人口の数に注目すればこの70年間に東京都よりも多くの若年人口が消滅したことになります。(1688万人>東京都の2025年推計の人口は1426万人)
昔は兄弟が多く一組当たりの子供の数が非常に多かった時代がありました。しかし、これは戦中戦後の特殊な時期であり、その後の夫婦間の子供の数はそんなに減っていないことが下記のグラフからわかります。 ![]() ![]() 出典:Revitalize社調査レポート:少子化の抜本策は中小企業の売上拡大である_2025年1月版.pdf
1970年の103万組→50万組(2022年)と半分以下になっています。
婚姻数を増やす方法は無いのでしょうか? 実は非常に興味深いグラフがあります。それが下記です。 ![]() このグラフの様に年収によって大きく婚姻率が変わることがわかります。しかも、年収と婚姻率の関係は正比例に近い状況で相関性が極めて高いのです。 今の20代前半の若い世代に実際に聞いてみても「給与が安くて、とても『娘さんをください』とは言えない。」とか、「結婚式や披露宴の費用、住居の準備、家財道具の購入、など、とても払えないので結婚できない。」という答えがかえってきます。
つまり、これだけ年収と婚姻率の相関性が高いと従業員の年収を引き上げない限り少子化問題は解決しない、と言ってもいいのかもしれません。
日本政府が1994年に初めて少子化問題に乗り出してから30年以上経ち、その間に支出された少子化問題対策費は「累計でナント66兆円!」を超えてしまいます。これ程の国家予算を投入しても効果が見られないのは原因と解決策が合っていなかったともいえるでしょう。 ![]()
・少子化対策=中堅中小企業の従業員の年収アップ? 少子化対策の為に中堅中小企業の経営者の皆さん、従業員の給与を上げて下さい、ということは簡単ですが、単純にそんなことをすれば会社の継続が困難になってしまいます。 こうした問題に対して昨年からRevitalizeという企業が立ち上がりました。私もアドバイザー、ビジネスプロデューサー、として参画しています。この企業は「中堅中小企業の売上や利益を増やす事」をミッションとしています。 間接的ではありますが、支援した企業の売上や利益が増え、その企業の従業員の年収が上がり、婚姻率が向上し、少子化問題を解決したいというのがRevitalize社の願いです。
・Revitalize社 この企業はマッキンゼー、デロイトトーマツ、などの大手コンサル企業や私が所属していたリクルートグループメンバー中心に設立された企業ですが、役員社員は5名程しかおらず、中堅中小企業支援ができる人材をネットワーク化しているネットワーク型組織を採用しています。 中堅中小企業支援できる人材を「ビジネスプロデューサー」と命名しており、現在、130名程のビジネスプロデューサーネットワークができています。そして、将来的には全世界で1万名のネットワークを構築することを一旦の目標としています。 様々なスキルを保有するビジネスプロデューサーが企業様の案件に応じて適材をプロジェクト編成し、支援させて頂くという形態を取っています。 例えば、下記の様なスキルに対応したビジネスプロデューサーがいます。 ① 人材育成 ② 組織活性 ③ 人材採用(新卒採用、海外人材採用):第一回目にご紹介したフューチャーデザインラボ社の創業会長が一例です。 ④ 販路開拓(国内、海外): 3000人の海外バイヤーと繋がっている海外販路開拓スペシャリストが実際にいます。 ⑤ DX、AI導入支援 ⑥ 資金調達支援 ⑦ M&A支援 ⑧ 新規事業、新商品開発支援 ⑨ ・・・
・木材産業の成長(売上や利益拡大)とRevitalize社 私自身は木材産業(林業)へ身を投じてから12年になりますが、古い産業だからなかなか事業を成長させるのは難しいと思っていました。 しかし、2018年から林業から地方創生に軸足を移し、様々な地方企業を調査し、Revitalize社で様々なビジネスプロデューサーと話してみると意外にも急成長している木材産業企業があることに気が付きました。
(ケース1)例えば、木青連の会員でもあり、私が2021~23年度に林野庁の有識者委員でご一緒させて頂いていた岩手県の柴田産業様はオーストリア林業並の高い素材生産の生産性を出されています。
オーストリアやニュージーランドは日本の様に急峻な山で林業をしていますが、ニュージーランドの場合、年収1000万円以上の林業者はたくさんいるようです。生産性を調べてみると2020年の数字ではありますが、日本の生産性の6.2倍です。(生産性=年間素材生産量/林業従事者)。(これについては別回のコラムで詳述します) また以前スイスフォレスターの方にお聞きしたところ、スイスの林業者の平均年収は1200万円だそうです。例えば、あるスイスの林業者は3人でハーベスターとフォワーダを購入し、24時間3交代で皆伐しているそうです。
様々な国との比較を行い何が違うのか抽出し、違いを埋める事ができないのか検討すれば生産性向上=利益アップ=従業員の年収アップは可能でしょう。 実はこれは林業に限った話ではなく、漁業の場合もノルウェーの1/20の1人当たり漁獲量、農業の場合もオランダのナスやキュウリの反収は10倍以上の開きがあるのです。(オランダのアルバイト時給は4500円/時だそうです)。これでは日本人の給与水準は上がるはずがありません。国際比較は重要です。
(ケース2)3年程前ですが、林野庁の有識者委員として、宮崎県の南那珂森林組合に訪問させて頂く機会がありました。この森林組合は平成13年に合併後、少しずつ売上を増やし、今では何と5倍になっていて大変驚きました。 当然、何故こんなに売り上げを増やすことに成功したのか?とお聞きしたところ、何か新しい事業が伸びたとか、管理している森林面積が激増したとか、大きな補助金を毎年もらっているとか、いろいろ想像していましたが、全く予想しない回答がかえってきました。
「メンバー一人一人がやりがいや自己実現を感じられるマネジメント」をしているから、という回答でした。
人材育成、組織活性、人材マネジメントは特に私が所属していたリクルートという企業では様々な最先端の取組がされていました。その根本的な思想は従業員一人一人に自己実現感を如何に得てもらえるかということでしたから、全く同じ回答で大変驚きました。
半年に一度の目標設定のすり合わせ:ここではメンバーが現場に一番近い所で何を感じて何をやるべきと考えているのか?という現場からの意志や考えの吸い上げと経営からの経営目標のすり合わせを行い、優先順位や選択と集中をはかり目標設定を上司と部下双方じっくり話し合って決定し明文化します。
私の場合は直属の部下に対しては週に一度は一対一で話し会える場を設定し、部下がどこでつまずいているのか、何がネックで進まないのか、だけを見てアドバイスをしていました。
リクルートを辞めてわかりましたが、これだけ人材マネジメントに時間をかけ、目標をすり合わせて、明文化し、評価し、次の目標設定に活かすというようなことをしている企業は稀有だとわかりました。しかし、こうしたことをやっている森林組合もあるのです。
OECDからも日本企業には人材マネジメントの問題があるのではないか?と指摘を受けている記事を以前、読んだことがあります。人材育成、組織活性、自己実現感の醸成などできていないと若い人は辞めてしまうかもしれません。人材マネジメントはとても重要な事だと思います。
(ケース3)キリが無いので最後にしますが、以前、地元の飛騨市の「広葉樹によるまちづくり」委員会というものに所属していました。広葉樹に関わる全ての事業者の代表者が参加して、地元の森林の70%に当たる天然林にある広葉樹の活用を検討しました。
驚いたことに同じサプライチェーンを構成している企業が集まったのですが、「初めて会いました」とか「他の事業者が何をしているのか具体的には何も知らなかった」という意見が出てました。それだけ近くて遠い存在で、お互いに相談や意見交換もせず、分業していたんだと思い知らされました。
定期的に何度か集まりの場が設定され、お互いの事がわかり、気軽に相談できる間柄に代わっていき、次第に地元の広葉樹活用のアイデアが出始め、直近の5年で地元の広葉樹の利用量は2倍に拡大、休止していた広葉樹の製材所が再稼働し、市内の広葉樹専用製材所は1軒から2軒に倍増しました。
このように成熟産業だから、とか、古い産業だから、と思っていても売上が何倍にもなる例はたくさんあると思います。少子化問題は国の問題ではなく、企業経営者全員の問題(従業員の給与アップが少子化問題解決の一丁目一番地)だと捉えることが重要です。
・企業、団体の皆様へ 従業員の給与を上げてやりたいのだけれども、今の利益水準では無理、とか、事業の今後の成長戦略が描けない、とか、組織の風通しが悪く問題が起きていてもなかなか伝わってこない、とか、新規事業や新商品開発をしたいのだけれどもやる人がいない、とか、新商品を開発したが売り方がわからない、とか、後継ぎがいなくて将来が心配、とか、様々なお悩みがあるかと思います。
Revitalize社はこうした悩み事に対応できる人材ネットワークを保有しており、適した人材によるご支援が可能です。
以上、ご関心あれば下記までご連絡下さい。 宮本義昭:メールアドレス:ym00876216@gmail.com
(過去のコラム) 第一回:人手不足対策、地域の空き家問題対策、リフォーム事業拡大 【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第1回 - 日本木材青壮年団体連合会
(所属企業、団体) 株式会社バルステクノロジー 代表取締役社長 兼 株式会社KOSO アドバイザー 兼 日本木材青壮年団体連合会 広報委員会アドバイザー 兼 株式会社Revitalize アドバイザー 兼 株式会社Dione アドバイザー 東京科学大学(旧東京工業大学)基金特別会員 プラチナ構想ネットワーク 法人会員 先進EP研究会 会員 Asagiラボ 賛助会員 東海バイオコミュニティ 法人会員 林野庁 森ハブ・プラットフォーム会員 東京丸の内イノベーションプラットフォーム林業分科会 蔵前バイオエネルギー 正会員
(拙著:代表作) |
2025/8/12 1:49 |
委員会活動紹介 第2回 総務委員会
![]() ![]() 木木場の魂を伝える技 ―「角乗り」から学ぶ文化と誇り
こんにちは。日本木青連・令和7年度の総務委員長を務めております、宮田昌幸です。神奈川県川崎市で、堀内木材株式会社という会社を経営しています。 木材業界の中では最も一般消費者に近い立ち位置にある、いわゆる“街の材木屋”として、木材だけでなく多様な建築資材を扱いながら、お客様のニーズに細やかに対応しています。 令和7年度の日本木青連では、総務委員会の委員長として活動しています。総務委員会の主な業務は、会議の準備・運営、庶務全般、会員情報の管理、議事録の作成、文書や帳簿類の管理など多岐にわたり、会の運営を下支えする役割を担っています。 今回は、総務委員会が担当した講演会のひとつ、「伝統芸能『木場の角乗』の継承」についてレポートをお届けします。令和7年7月12日(土)、新木場の木材会館で開催されたこの講演会は、木場の材木屋である長谷川会長の「せっかく木場に来てもらうのだから、かつて“木の街”だったことを感じてもらいたい」という想いから企画されました。 今の木場・新木場にはビルやマンションが立ち並び、木材の街だった面影はほとんどありません。でもかつては、全国から筏で木材が集まり、川には丸太や角材が浮かび、木と水と人の営みが交わる場でした。古くからある木材業は、歴史の中で生きていると実感できる機会が豊富にあり、先祖を敬い仕事をすることはとても大事なことだと考えています。 講師にお迎えしたのは、林野庁木材産業課長の福田淳さん。ただしこの日は、林野庁職員としてではなく「東京木場角乗保存会」の一員として、角乗りへの情熱をたっぷり語ってくださいました。なんと福田さんは、若い頃に木場の官舎で暮らしていた際、角乗りに出会い、入会。今では後進を指導する立場にまでなられたそうです。 ![]() <角乗り保存会の半纏で登場した福田様>
角乗りとは、水に浮かべた角材の上でバランスを取りながら技を披露する、江戸時代から伝わる伝統芸。話を聞くうちに、それがただの“芸”ではなく、川の上で木材を扱っていた「川並(かわなみ)」たちが命をかけて磨き上げた“技術”であり“誇り”であることに気づかされました。 ![]() <角乗りの歴史をわかりやく解説いただきました>
特に印象に残ったのは、角材の三角の角に立つという高度な技の話。足の裏だけで微細な動きを捉え、全身でバランスを取る――その極意を聞いて、会場は一瞬にして緊張感に包まれました。ご本人が肋骨を折ったというリアルな経験談が、それをさらに引き立てていました。 ただ角乗りは、危険な芸ではなく、日本文化の「見立て」の美意識が息づくものということも福田様のお話しからよく理解でできました。日常の所作が芸となり、文化となり、伝承されていく――。木と水と人が織りなす営みの中で自然と生まれたその流れに、私は強く心を打たれました。
講演後の会場には、静かな余韻が漂っていました。参加者一人ひとりが、「良い話を聞いたな」と感じていたように思います。私自身も司会進行を忘れて、ひとりの聞き手としてお話にのめり込んでしまいました。角乗りは、静かに、でも確かに心に残る“木場の魂”。次の機会には、ぜひ多くの仲間にもこの文化に触れてほしいと願っています。 ![]() <角乗りを披露している福田様ご自身の動画を交えて解説> ![]() <オンラインでもたくさんの会員にご参加いただきました> |
2025/8/12 1:39 |
活動紹介 令和7年7月11日 第2回 経営研修会レポート
![]() ![]() 木と人とまちをつなぐ──木村直樹さんの挑戦
こんにちは。令和7年度 日本木材青壮年団体連合会(日本木青連)総務委員長の宮田昌幸です。今回は、7月11日に東京・深川の長谷川萬治商店で開催された「第2回経営研修会」の様子をレポートします。 「いきなり第2回?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。今年度の経営研修会は全3回のシリーズで、第1回は4月に開催済み。ただその時は、まだウッディレターの発行前だったため、レポート掲載は今回が初回になります。いずれ、第1回の内容も別途ご紹介する予定ですので、お楽しみにお待ちください。 さて、日本木青連で令和5年度から始まった「経営研修会」は、会員が経営に役立つ学びを深めることを目的とした勉強会です。令和7年度のテーマは「共生社会」。 現代は人とのつながりが希薄になり、孤立が深刻な課題となっています。誰もが自分らしく生きられる社会──障害や年齢、性別の違いを超えて支え合える社会の実現が、いま求められています。 このテーマのもと、日本木青連では今年度3回の研修会を企画。その第2回に登壇いただいたのが、株式会社木村設計A・Tの代表取締役・木村直樹さんです。 木村さんは、岩手県花巻市で設計事務所を営みながら、地域密着型の木造建築を手がけてきました。近年は福祉や不動産の分野にもフィールドを広げ、「共生社会」を形にする街づくりを実践されています。 活動の原点には、木材業を営んでいたお祖父様の存在、そして三女のご誕生があったそうです。ダウン症を持って生まれた娘さんとの日々の中で、「自分の手で、安心して暮らせる場所をつくりたい」という思いが芽生え、2019年には障がいのある方のためのグループホームを開設。その後も、放課後等デイサービスや訪問看護などを次々と展開し、建築と福祉をつなぐ新たな挑戦を続けています。 その実践の象徴が、放課後等デイサービス事業所「グレムレストぽとり」。商店街の空き地だった場所に、木のぬくもりを感じられる建物を建て、小学生や中学生が立ち寄りやすい豊かな空間に再生しました。設計・運営・不動産の視点を組み合わせた“まちの交差点”のような空間は、「こんな場所が自分のまちにもあったら」と思わずにはいられません。 特に印象に残ったのは、木村さんが大切にしているという一節。「私は、私にできることをしているだけ」。これは、南米の先住民に伝わる民話「ハチドリのひとしずく」に登場する言葉だそうです。 小さな存在でも、できることをやり続ける。その積み重ねが、社会に変化を生む──木村さんの姿は、木を使うことの意味や、人とまちとの関係を見つめ直すきっかけを私たちにくれました。 次回は最終回、第3回経営研修会。どんな話が飛び出すか、今から楽しみです。 ![]() <株式会社木村設計A・Tの代表取締役・木村直樹さん> ![]() <障がい者の自立の場を増やすためのグループホーム事業を開始> ![]() <放課後等デイサービス事業所「グレムレストぽとり」を含めた複合施設の計画> ![]() <木村さんを紹介していただいた小友副会長と> |
2025/8/12 1:29 |
木力NOTE ―木で未来をつくる人たちへ 第4回
![]() ![]() 第4回 木造建築を支えるプレカットの技術と知恵
日本木材青壮年団体連合会、会長の長谷川泰治です。 この会長コラム「木力NOTE」も、おかげさまで第4回を迎えました。今回は、木造業界に欠かせない存在となっている「プレカット」についてご紹介します。
家を建てるとき、昔は大工さんが現場で木材を一本一本、手作業で刻んでいました。柱や梁(はり)を組むための仕口(しくち)や継手(つぎて)と呼ばれる部分を、ノコギリやノミを使って削って仕上げる――いわゆる「手刻み」が当たり前だった時代です。仕口は、異なる方向の木材を接合する際に使われ、たとえば柱と梁のように直角や斜めに交差する部分に用いられます。一方、継手は、同じ方向の木材同士を直線的につなぎ、長さを延ばすための接合方法です。このような技術を駆使しながら、職人の手によって一つひとつ加工されていたのです。この「手刻み」は、建築現場や材木屋の下小屋といわれる倉庫の片隅などで行われていました。しかし現在の木造住宅では、多くの場合「プレカット」と呼ばれる工場加工が用いられています。プレカットとは、建築に使う木材をあらかじめ工場で加工しておく技術のこと。設計図に基づいて、専用の大型機械が木材を自動で切断・加工し、現場ではその部材を組み立てるだけで済むように準備されます。これにより、建築のスピードや精度は大きく向上し、工期短縮や人手不足への対応にも大きな効果を発揮しています。 ![]() <仕口(しぐち)> ![]() <継手(つぎて)>
プレカットが本格的に普及し始めたのは1980年代以降のことです。当初は、伝統的な日本の木造建築の工法である在来軸組工法に対応した加工が中心でした。在来軸組工法とは、柱や梁、土台などの部材を、仕口や継手といった木の接合方法で組み上げる工法で、地域に根ざした木造住宅の多くがこの工法を採用しています。ちなみに現在の在来軸組工法では、接合部が抜けないように金物のボルト等で補強しています。プレカットの黎明期には、単体機と呼ばれる、仕口や継手を一つずつ加工する機械を使っていました。しかしその後、機械やソフトウェアの進化によって大型の自動加工機が登場し、木材を投入するだけで設計図どおりに自動で複数の加工をこなすことができるようになりました。現在ではその規模も年々大きくなり、1日に何十棟分もの木材を加工できる大型プレカット工場が日本各地に現れています。 ![]() <横架材プレカット加工機> ![]() <合板プレカット加工機>
さらに最近では、多軸NC加工機など高度な機械制御技術も活用され、従来の機械では難しかった複雑な納まりや繊細な加工も、高精度かつ安定して行えるようになってきました。また、従来の在来軸組工法だけでなく、金物を使って構造材を接合する金物工法への対応や、中大規模木造建築向けの大きな構造材(マスティンバー)を加工するための大型加工機も登場し、プレカットの適用範囲は大きく広がっています。このように、プレカットは住宅だけでなく、非住宅や特殊建築物にも対応できる技術として進化を続けており、木材建築の可能性を広げる大きな原動力となっています。
どれだけプレカット加工が進化したとしても、すべての作業を機械が自動的に行うわけではありません。プレカット工場では、まず設計図をプレカット加工用の図面に変換するための「プレカットCADオペレーター」が必要です。このオペレーターには、木の性質、構法、納まり、建設現場の状況など広範な知識が求められ、複雑な構造の特殊物件の場合は、大工と同じレベルの判断力が必要になることもあります。 ![]() <プレカットCADオペレーター>
さらに、工場の加工担当者は、木材1本1本の「元」と「末」を見極めながら機械に投入していきます。これは木の根元側(元)と先端側(末)を意味し、繊維の流れや強度の関係から向きを間違えると構造的な問題を引き起こす可能性があるためです。また、木材には「木裏」と「木表」という裏表の区別があります。「木表」は年輪の外側(樹皮側)、「木裏」は内側(芯に近い側)で、乾燥による反りやねじれの影響を受けやすい面でもあります。これらを正しく判断し、適切な向きで加工を行うことが、長持ちする木造建築には欠かせません。こうした判断には、木材に関する豊富な知識と、それを現場で活かす知恵が求められます。 ![]() <仕口の検査をするオペレーター> ![]() <手加工を行うオペレーター>
プレカット加工の現場では、最前線で働くスタッフたちが、自然素材である木と丁寧に向き合いながら、毎日地道な仕事を積み重ねています。木と向き合う知識や創意工夫は、今でもプレカット工場でしっかりと生きているのです。木の力の一つに「加工性」があります。木は加工しやすいため、さまざまな形に加工ができ、多様な空間づくりが可能です。プレカットという見えない力に支えられた住まいには、たくさんの人と技術と想いが詰まっています。木の力と、人の力。木造建築に関わる者として、そのどちらも大切にしていきたいと考えています。 |
2025/7/27 23:28 |
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第1回
![]() ![]() 人手不足対策、地域の空き家問題対策、リフォーム事業拡大
・はじめに 初めまして。このたび日本木青連の広報委員会アドバイザーを拝命させて頂きました宮本と申します。私は日本の素晴らしい「地方」を元気にしたいと思い、2012年3月末で25年間勤めた株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)を退職し、いったん、出身地の岐阜県岐阜市の実家に帰りました。 その翌年から岐阜県飛騨市で林業をしていた弟と合流し、2014年からは会社を設立し、林業を始めました。2018年からはリクルート時代にベンチャーキャピタル2社の代表をさせて頂いた経験を活かして「地方に有用な技術やノウハウを保有する企業を支援する」事業を行っております。 この7年間ご支援させて頂いた企業やリサーチした研究結果に関して有用な情報を「お役立ち情報」として、皆様にご紹介させて頂きたいと考えております。
・中堅中小企業最大の問題:人手不足問題 私の住んでいる岐阜県北部の飛騨地方は「飛騨高山」「下呂温泉」「世界遺産合掌造りの白川郷」「君の名は。というアニメの聖地になった飛騨市」などの観光資源に恵まれており、新型コロナウイルス感染が落ち着いた頃から宿泊施設も飲食店も活況を呈しております。 ところが、極めて深刻な人手不足により、設備稼働率が60%程度までしか上げられず、大きなビジネス機会を逸してしまっている状況です。また、病院の看護士不足、介護施設の介護士不足もかなり深刻だと聞いています。地元の森林組合も「2年間求人広告を出し続けたが、1件の問合せ電話さえ無い。」とのことで事業存続の危機です。 岐阜県南部の美濃地方は関市の刃物産業や各務原市の航空自衛隊基地、川崎重工に関係する航空、防衛関連の製造業、お隣の愛知県の自動車産業の工場、など製造業が盛んですが、こちらも人手不足で製造ラインの一部を停止せざるを得ない、という状況まで追い込まれている企業がたくさんあると聞いています。 日本は失われた35年と言われていますが、過去35年間、日本の大企業は採用人数を減らしていません。日本全体としては少子化が進展していますから中堅中小企業が採用できる人数は減ってきているのです。
・加速する人手不足問題 ![]() この日本の人口推移を見てもわかるように今後5年で300~400万人の労働人口(15~64歳人口)が減少していきます。これは日本の都道府県人口ランキングで10位の静岡県(人口約350万人)が5年毎に1つずつ消滅しているのと同じインパクトを持ちます。 「今年の採用は大変苦労した、来年は頑張ろう!」では問題は解決しません。むしろ、年々厳しさを増すばかりです。日本の構造的な問題なのです。
・地域の空き家問題 地域では空き家問題が深刻になってきています。私のすぐ近くにも空き家があり、朽ち果て、倒壊寸前の危険な空き家があります。 日本全体でも空き家は増加してきており、2018年に1000万戸を越え、2033年には2100万戸を突破しそうな勢いです。 私の住んでいる地域でも大きな問題となっており地方自治体の大きな負担になってきています。空き家の所有者の特定、特定ができても連絡先がわからない、連絡先がわかって連絡しても空き家対策を実施しない空き家所有者の存在、・・・と負担感が増しています。 ![]() ・フューチャーデザインラボ社 日本の将来の人手不足問題を予測し、2007年に設立されました。主にアジア各国のTOP大学と連携している日本語学校とパートナー契約を結び、日本語の話せる人材を日本企業や公共団体へ紹介しています。 海外人材を採用すると一番問題になるのが日本語です。この企業は、採用面接までに日本語検定3級以上まで習得している人材を紹介します。着任までに2級、着任後は1級をめざす、という日本語教育サービスも行っています。 香川県に日本語学校を設置し、着任した海外人材の日本語教育や勤務先や生活面で困っている事が無いかフォローすることで人材定着率を高めているサービスもしています。(既に海外人材を採用した企業にもこのサービスは提供可能です)
・海外人材のブルーオーシャン:モンゴル人材 海外人材採用といえば主流は中国やインドなどの人口が多く、高度教育人材も豊富な国の人材採用が主流です。しかしながら、これらの国の経済成長により、所得は増え、日本以外にも豊富な人的なネットワークや選択肢がある為、なかなか日本に定着してもらえないという課題があります。 そんな中で極めて親日国(先日も令和7年7月6~13日に天皇皇后両陛下がモンゴル訪問されています)、定着率が高い(冬季はマイナス40℃にもなる厳しい気候、石炭ストーブが主流で家庭内の空気が悪い、・・・などの理由で日本に定住したいという希望者が多い)、教育水準が高い(日式高専:日本の高専と全く同じ学科構成、カリキュラム、毎年定年した高専の先生がモンゴルの日式高専に着任、大学も人口の割には数が多く、高度教育人材は決して少なくない)のがモンゴルです。 フューチャーデザインラボ社はモンゴルにも日本語学校を設立し、モンゴルの各大学、日式高専と提携し、高度人材、技術人材を日本企業に重点的に紹介しています。 また、代表はモンゴルの最高学府のモンゴル国立大学の理事長のアドバイザーにも就任しています。
・熱海観光協会:人手不足、空き家問題解決+住宅リフォーム事業の拡大 日本有数の観光地である熱海でも人手不足は深刻でしたが、フューチャーデザインラボ社との提携により毎年20~30名の外国人材を受け入れることで人手不足問題に対して一定の解決策を見出しました。 また、海外人材を受け入れる為に空き家を確保→シェアハウスにリフォームして受入、高度人材であれば日本滞在期間制限はありませんし、家族を呼び寄せることも可能ですので、ファミリー用に空き家を改修する、なども見込めます。 こうした動きにより観光施設は人手不足問題を、地方自治体は空き家を解決でき、地元工務店は住宅リフォームの仕事が増えました。
・工務店の代理店契約 現在、私はこの海外人材紹介と人材定着サービスを行っているフューチャーデザインラボ社に多くの企業を紹介しています。また、熱海の成功事例から日本全国の工務店に声をかけてフューチャーデザインラボ社の代理店になって頂くようお願いして回っています。 代理店といっても紹介のみでクロージングはフューチャーデザインラボ社が行いますので手離れも良いです。
・企業、団体の皆様へ ①人手不足で困っている企業、団体様 このフューチャーデザインラボ社のサービスは完全成果報酬型ですので採用に至らなければ費用は一切かかりません。一度オンライン面接会に参加してみては如何でしょうか? ②「人手不足でお困りの企業、団体様」にこのサービスを紹介したいと思われる企業様 一度、自社でも海外人材の受け入れをしてみて下さい。それで全体の流れのイメージや採用のメリットを感じてみて下さい。
私の知人の製造業の工場を経営している企業では暗黙知化していた各ラインの作業手順を海外人材受け入れのタイミングで全て動画にして、各ラインにQRコードを貼り付けてすぐに作業ができるようにしたそうです。 これにより、人材育成期間の短縮、日本人でも早期戦力化、仕事内容が理解されやすくなり退職者の減少など多くのメリットがあったとの事です。
私も海外の人達と仕事をした経験がありますが、海外人材採用のメリットは人手不足問題解決だけではありません。上記の例の様に受入側で促進した改善のメリットや海外人材の全く違う視点や日本人が見過ごしてきた問題に気が付くことがイノベーションの起点になることがあります。
皆様の企業、及び、取引先や同業者など周りにいらっしゃる企業様の人手不足問題の解決に役立てて頂き、更に新たなイノベーションにより企業の収益が拡大し、地方や木材産業が元気になればと思います。
以上、ご関心あれば下記までご連絡下さい。 宮本義昭:メールアドレス:ym00876216@gmail.com
(所属企業、団体) 株式会社バルステクノロジー 代表取締役社長 兼 株式会社KOSO アドバイザー 兼 日本木材青壮年団体連合会 広報委員会アドバイザー 兼 株式会社Revitalize アドバイザー 兼 株式会社Dione アドバイザー 東京科学大学(旧東京工業大学)基金特別会員 プラチナ構想ネットワーク 法人会員 先進EP研究会 会員 Asagiラボ 賛助会員 東海バイオコミュニティ 法人会員 林野庁 森ハブ・プラットフォーム会員 東京丸の内イノベーションプラットフォーム林業分科会 蔵前バイオエネルギー 正会員
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2025/7/27 23:20 |
日本木青連ネットワーク紹介 第1回
![]() ![]() 日本木青連の会員企業を「お仕事での連携」を絡めて紹介していくコーナー。 第1回目は高知県の繋がりをご紹介していきます! ![]() 左から、(株)高知林業 中平徹、(有)川井木材 川井博貴、池川木材工業(有) 大原悠延
高知県の四万十エリアで国有林を主体に素材生産を行っているのは(株)高知林業。同社は高性能林業機械の販売・修理業も四国全域で行っており、自社でも生産性の向上につながる設備に積極的に投資しています。現在、非常に急峻な国有林の皆伐現場で、オーストリア製の自走式タワーヤーダーを用いた集材作業を行っており、搬出された原木は現場近くに構えるストックヤードで自ら仕分け選別作業を行い、規格ごとに決めている売り先へ出荷しています。 ![]() その原木を輸送するのは、スタイリッシュなトレーラーが目を引く(有)川井木材。同社も主軸の素材生産事業を行う傍ら、自社輸送体制から発展させた運送事業を強化中。欧州の景色を彷彿とさせるアルミスタンションを搭載したトレーラー台車で、かっこいい林業を実践しています。最近では、ピンチップの生産事業も強化しており、そちらでも木青連のネットワークを活かした事業展開を行っています。 ![]() 高知林業のストックヤードから、ヒノキの小径材が向かう先は、池川木材工業(有)。イケモクの愛称で親しまれる同社は、国内最大の生産量を誇る簀子メーカーであり、搬入された原木もホームセンター向けの簀子に加工されます。その他、ペレット、ヒノキアロマオイル、木工製品、ラミナ製材など、多岐にわたる木材関連事業を展開中。仁淀川町池川の本社前には、仁淀川の支川である土居川が流れ、心洗われる仁淀ブルーに囲まれて皆様気持ちよく仕事をされています。 ![]() ![]() かっこいい簀子に仕上がりました。
次回は広島県より会員の繋がりを紹介したいと思います!! |
2025/7/27 23:18 |
活動紹介 令和7年5月29日 意見交換会レポート
![]() ![]() 日本木材青壮年団体連合会(以下、日本木青連)令和7年度会長補佐の寺見良太(テラミリョウタ)です。
令和7年度タスクフォース事業の一つとして、5月29日に、自民党青年局との意見交換会を行い、1時間と短い時間ではありましたが、とても有意義な意見交換を行うことができました。過去、日本木青連は自民党青年局とは毎年意見交換会を行っておりましたが、コロナ禍になり、数年意見交換会は開催されておらず、数年ぶりの開催となりました。
青年局団体副部長山本大地衆議院議員司会進行のもと、青年局長の中曽根康隆衆議院議員のご挨拶で始まりました。 まず、青年局の参加者の自己紹介、つぎに日本木青連の参加者の自己紹介を行い、日本木青連とはどういった団体なのかということを長谷川会長よりご説明いたしました。 ![]() ![]() 次に実際に意見交換を行いまして、
日本木青連側から①木材需要の促進 ②価格形成の在り方 ③担い手確保と若者への訴求 ④林業の現場課題 ⑤災害対応力の強化 ⑥DXの推進 ⑦木育促進と木製品の輸出拡大 ⑧2027年国際園芸博覧会での木材利用推進 についてのテーマに基づく意見を述べさせていただきました。 ![]() ↑沖中70周年実行委員長が真剣に意見を述べているシーンが、印象的ですね。
青年局の議員の方々も積極的に意見を述べていただき、メモを取りながら我々の意見に耳を傾けていただく姿は非常に頼もしいものに感じました。 ![]() 1時間はあっという間に終わり、閉会に際して、青年局長代理の平沼正二郎衆議院議員よりご挨拶いただき、当会は私が閉会の挨拶をさせていただきました。 最後に記念撮影を行い、今後の木材利用の一助となるべく有意義な意見交換会を行うことができました。 ![]() |
2025/7/27 23:15 |
木力NOTE ―木で未来をつくる人たちへ 第3回
![]() ![]() <全国会員大会とは何か? “わすれもの”を取り戻した一日>
こんにちは。 令和7年度の日本木材青壮年団体連合会(日本木青連)で会長を務めております、長谷川泰治です。3回目のコラム「木力NOTE ―木で未来をつくる人たちへ」になります。
さて今回は、日本木青連の活動の中でも最大級のイベント、「全国会員大会」についてご紹介します。
前回のコラムでも少し触れましたが、日本木青連では現在、10個の委員会が活動中。その中のひとつが「全国大会実行委員会」です。名前のとおり、「全国会員大会」を企画・運営するチームです。 この全国会員大会は、日本木青連が毎年開催している、一番大きなイベントです。
実はこの大会、日本木青連の会則にもちゃんと意義と目的が書かれていて──
「日本木青連は、参加会員の会員団体が、日頃各地域において業界の諸問題に取り組んだ研究、その他の活動を基盤に、広い視野に立って業界その他へ提言し、行動する団体であり、全国会員大会は日頃の研究成果を発表しあうとともに、会員相互の親睦と啓発を目的として年1回行われるものであり、過去から永遠の未来へ続く日本木青連活動の1つの節として、明日への飛躍を期し、その時代とその地域に見合った大会として開催されるものである。」
──という感じで、まさに日本木青連の“節目”であり、“顔”となる行事なのです。
大会には毎年500人以上の会員やOB、関係団体の方々が集まって、盛大に開催されます。 主催は8つの地区が持ち回りで担当するスタイルなので、毎年開催地が変わるのもポイント。地域色が色濃く出る、バラエティに富んだ大会になっています。
そして、今年5月24日に開催されたのが「第70回全国会員関西大会」。場所は奈良県の奈良春日野国際フォーラム甍。今回も約550名が集まりました。
注目すべきは…なんと式典が能舞台で行われたこと! 開幕の演目は、格式高い「高砂(たかさご)」。主催者や来賓のスピーチも、すべて能舞台上。私も、人生初の能舞台で所信表明を行いました。緊張もしましたが、やっぱり特別な場所に立つと気が引き締まります。 ![]() <能舞台で行われた大会式典> ![]() <能舞台での緊張感の中、厳かな雰囲気で式が進みました>
続いて行われたのは、「木材活用コンクール」と「全国児童・生徒木工工作コンクール」の表彰式。受賞者が、揚幕から出てきて橋掛かりを通って登場するという本格的な演出。舞台に立った子どもたちは少し緊張していたかもしれませんが、きっと良い思い出になったと思います。
そしてフィナーレには、初の試みとして「我武者羅應援團」が登場! 卒業メンバーへ向けて、全力でエールを送ってくれました。あの「本気だから悩む」という言葉…グッときましたね。心の奥に残る、力強い応援でした。
夜はお待ちかねの「大懇親会」。“大”が付くのも納得のスケール感です。ここで多くは語りません。私も昔、先輩から「大懇親会は行ってみないとその価値はわからない」と言われました。毎年、開催する地域の特色やその年のカラー色濃くでてくる大変に素晴らしい時間となります。是非、会員、そして関係者の皆さまにはご参加いただきたい。の一言につきます。 ![]() <大懇親会 乾杯のご挨拶> ![]() <大懇親会 吉田実行委員長のご挨拶>
全体として、段取りもスムーズで、会の随所に細やかな工夫と“熱”が込められていて、今年も本当に素晴らしい全国会員大会になりました。というわけで、全国会員大会は、ただの年次行事ではなく、日本木青連の「魂」がこもった大切な時間です。「正しい姿勢で~人生の『わすれもの』を取り戻そう~」というスローガンの通り何か大切なものを思い出したひと時を過ごしました。どんな時代でも、人と人とが出会い、つながり、共に学び、笑い、語り合う──。そんなかけがえのない場が、毎年全国のどこかでつくられています。 ![]() <ポロシャツの色を地区別に。カラフルで楽しくわかりやすくて好評でした>
来年の全国会員大会は、令和8年6月13日(土)に東京渋谷で開催されます。再開発が進み世界から大勢の人が集まる渋谷、しかもサッカーワールドカップ真っ只中。そこで木の力をアピールし木材産業を盛り上げていきます。まだ参加されたことがない方は、ぜひ次の全国会員大会で、その熱量を体感してみてください。 ![]() <次回全国会員関東大会は令和8年6月13日 渋谷で開催> |
2025/7/13 0:34 |
活動紹介 令和7年6月19日 セミナーレポート
![]() ![]() 日本木材青壮年団体連合会(以下、日本木青連)の令和7年度広報委員会担当副会長の小友康広(オトモヤスヒロ)です。 今回、私からは令和7年6月19日(木)に一般社団法人JBN・全国工務店協会の国産材委員会との共催で行われた「工務店と木材産業で森の価値を考える共創セミナー」のレポートをお届けいたします。 ![]() ↑会場は沢山の人で熱気ムンムン
講師には高付加価値の木材生産、低コストな素材生産と育林、生態系に配慮した森林管理や森林認証に積極的に取り組む速水林業の速水亨氏をお招えし、日本の森が持つ価値や機能を考えるセミナーとなっておりました。
沢山の学びがありましたが、その全てや資料は当然日本木青連とJBNの会員の皆様のみのものですので、本当に一部ではありますが「速水様からのクイズ」と「業界の方でなくても学びになることを3つ」だけご紹介します!
クイズ:地球上の最高齢の木について 講演の序盤に速水様から突然のクイズがありましたので、その内容を皆さんにも出題します!(デデン!) 「地球上で最も長生きの木の年齢は何年だと思いますか?」以下3択からお選びください 1. 3000年 2. 4500年 3. 9000年 さて、皆さん分かりますか? 会場の参加者もほぼ1/3ずつに分かれていたようでした。(正解は写真の後で) ![]() ↑講演される速水様、話が面白いこと面白いこと
正解は「3. 9000年」でした!改めて、木の偉大さを感じずにはいられません。
そして、ここからは学びになる話を3つご紹介。
①元々原木価格比率が31%だったのが4.1%になっている… 原木とはいわゆる丸太のことです。何かの製品(例えば「家の柱」「楽器」など)の売値に占める原木価格は1980年には31%あったのですが、2025年にはなんと4.1%になってしまっているとのことです… 2005年には1桁%になっている状況であり「それは山が資産である」と思う人が減り、相続などに問題がでる世の中になってしまうな…と思いました。 このような事実や状況をしっかりと消費者側に届け、山主さんや山で働く人達へ少しでも還元を増やしていけるようにせねばならないと改めて実感しました。
②金で買える安全は買え! シンプルですがまさにその通りだと思いました。 業界内では有名な話ですが「林業の山での作業現場は日本で最も死亡事故発生率が高い職場」となっております。それなのに①にある通り原木は安く取引されてしまう… その状況を一刻でも早く脱出するために「作業担当者が技術を磨く」というのは当然必要なのですが、それと同等以上に「金で買える安全は買う」という考え方、覚悟がこの業界の経営者に必要であることを伝えていただきました。
③「間伐が環境に優しい」は本当なのか? これは衝撃の事実なのではないでしょうか!? 日本の林業ではここ数十年「植林し、間伐により成長させるべきものを残して良い木材を育てる」ことが当たり前となっておりますが、常識に一石を投じていただきました。 世界の林業を見てきた速水様曰く「間伐をしない国も沢山ある」とのことです。 他にも「北米では山火事防止のために間伐をしている(成長促進ではない)」「バイオマス生産(燃やして燃料にするための木材)は間伐がない方が効率的」ということを教えていただきました。 数十年前と材の使われ方や自然環境の考え方が変わっており、今までの間伐を捉え直す必要があるタイミングなのかもしれません。
さて、皆様いかがだったでしょうか?このような学びの場が定期的にあるのが日本木青連、そしてJBN様の魅力でもありますね。 そして、講師の方への深い個別質問や会員同士の交流のための懇親会もほぼ毎回開催されており、今回も皆様楽しく知識と親睦を深めていらっしゃいました。 ![]() ↑参加者がみんな楽しそうな感じが伝わってきます
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2025/7/13 0:22 |
木力NOTE ―木で未来をつくる人たちへ 第2回
![]() ![]() <マスティンバーって何?>
こんにちは。令和7年度の日本木材青壮年団体連合会(日本木青連)で会長を務めております、長谷川泰治です。会長コラム「木力NOTE ―木で未来をつくる人たちへ」も、今回で第2回となりました。 この「ウッディレター」は、今年からついに会員以外の皆さまにもお届けできるようになり、木材業界の外にも木の魅力を広く発信していく新たな取り組みとしてスタートしました。 「言い出しっぺが自ら動く」をモットーに、しばらくの間は私がコラムを担当させていただきます。どうぞお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
さて今回は、自社の取り組みもご紹介しつつ、「マスティンバー(Mass Timber)」について、少しお話させてください。 ![]() <代表的なマスティンバーCLT>
最近、木材業界で注目されているのが「木造ビル」。これまでビルといえば鉄骨や鉄筋コンクリートが当たり前でしたが、ここ数年、世界的な環境意識の高まりとともに、木造ビルが立ち並ぶ「都市の木造化」が現実味を帯びてきています。
木材は、適切に植えて育てて使う——というサイクルを回せば、50〜80年ほどで再び資源として活用できる「循環型」の素材です。しかも木造建築が進むことで、木が吸収した炭素を都市の中に“貯蔵”でき、カーボンニュートラルの実現にも大きく貢献します。この炭素貯蔵の効果は、「都市に森をつくる」という表現でも語られ、木材利用の価値をわかりやすく示しています。 ![]() <木材は循環型資源。適切に植えて育てて使うサイクル>
この「都市の木造化」を支えるのが、「マスティンバー(Mass Timber)」と呼ばれる木質構造材です。名前の通り、“Mass=大きなかたまり”、“Timber=木材”。つまり、「大きなかたまりの木材」というわけです。といっても、巨大な丸太をそのまま使うわけではなく、複数の板材や角材を組み合わせて、大きくて強靭な構造材をつくる技術を指します。これがあるからこそ、従来の木材では難しかった木造高層建築などが可能になってきました。
マスティンバーの代表格といえば、「CLT(Cross Laminated Timber)」。板材を繊維方向が交差するように重ねて接着した、大型のパネル構造材です。ヨーロッパを中心に発展し、今では日本や北米でも活用が進んでいます。特に欧州では、CLTを使った木造ビルの実例が近年ますます増えており、都市の木造化を象徴する存在となりつつあります。 ![]() <CLT(Cross Laminated Timber)>
マスティンバーには、ほかにも大断面集成材や大断面LVL(単板積層材)など、多様な種類があります。ちなみに、大阪万博の大屋根リングは、柱や梁に大断面集成材をさらに束ねたマスティンバーを用いて貫構法で組み上げ、床(デッキ面)にはCLTを敷き詰めて作られています。 ![]() <大阪万博 大屋根リング>
ここで、私が社長を務める長谷川萬治商店が開発を進めているマスティンバーの一つ、「DLT(Dowel Laminated Timber)」についてもご紹介させてください。DLTの最大の特徴は、接着剤を一切使わず、木のダボ(棒)だけで板をつなぐという、極めてシンプルで“木らしい”構造であることです。スイスのローザンヌ工科大学でナッテラー教授が考案した技術にルーツがあり、現在ではドイツやスイスの山間部を中心に、小規模な製材工場や工務店などが地域密着型で活用しています。DLTの面白いところは、節や丸みのある「B材」や「ハネ材」といった個性的な材を活かせる点です。それらを“味”としてデザインに取り入れることで、魅力的な面材として活用できます。皮付きのまま使用することも可能で、インテリアとしても個性が際立ちます。さらに、他のマスティンバー製品の製造過程で生じた端材や規格外の板材をDLTとして再活用することで、歩留まりが向上し、炭素固定量も増加します。環境に優しく、木材産業全体にとってもメリットの多い取り組みです。“マスティンバーらしくないマスティンバー”かもしれませんが、全体最適を考えれば、非常に重要な存在だと私は思っています。 ![]() <DLT(Dowel Laminated Timber)の作り方>
木を通じてカーボンニュートラルな社会づくりに貢献するには、マスティンバーの利用拡大が不可欠です。CLTや大断面集成材、そしてDLTなどのマスティンバーを、用途に応じて適材適所で使い分けることで、木の可能性はまだまだ広がっていきます。 |
2025/6/29 22:19 |
木力NOTE ―木で未来をつくる人たちへ 第1回
![]() ![]() ![]() <日本木青連ってどんな団体?>
はじめまして。令和7年度の日本木材青壮年団体連合会(日本木青連)で会長を務めております、長谷川泰治です。 今年から「ウッディレター」が、なんと会員以外の皆さまにも届くことになりました。このチャレンジングな試み、実は広報委員会のメンバーたちが昼夜を問わず知恵を絞り、準備してくれたものです。そして、その企画のひとつが——言い出しっぺの私が担当する会長コラム。題して「木力NOTE ―木で未来をつくる人たちへ」。 このコラムでは、木材のこと、木材産業のこと、そして日本木青連のことなどを、会員以外の皆さまにもできるだけわかりやすくお伝えしていきます。正直に申し上げると、文章を書くのは少し苦手です。でも、「木力」をより多くの方に届けたいという想いで、人生で初めてコラムに挑戦しています。 さて、ここまで読んでくださった方の中には、「日本木青連?」「広報委員会って何?」と少し引っかかった方もいらっしゃるかもしれません。今回はそのあたりを、まずご紹介したいと思います。
まずは団体名、「日本木材青壮年団体連合会」——少々長いですね。略して「日本木青連」と呼んでいます。ただ、この略称も地域によってさまざまで、「日木青(にちもくせい)」「日木(にちもく)」「木青連(もくせいれん)」など、いろいろな呼び方があります。「でも、それじゃバラバラでわかりにくいよね」ということで、ある時から「日本木青連」に統一しようと決め、会則にも明記されるようになりました。 とはいえ、現場ではやはり地元流の呼び方も根強く残っており、こうした多様性も木青連らしさの“味”なのかもしれません。
改めてご説明しますと、日本木青連は、全国8地区の連合組織で構成されており、北海道から九州まで、木材産業に関わる若手経営者や後継者、およそ850名が所属しています。会員の皆さんは各都道府県の「会団」に所属し、会団は各「地区協議会」及び「日本木青連」に所属している形態となっています。 ちなみに私は、関東地区の「東京木材青年クラブ(東京会団)」に所属しています。地域の枠を超えて仲間が集い、親睦を深め、知識を磨き、業界の未来を語り合う——そんな“本気で楽しい”場が、日本木青連です。真面目に語り合うからこそ、懇親の場も本気で楽しめる。そんな雰囲気が魅力です。 木材業界におけるネットワークの広さ・深さは、おそらく日本一。少し勇気を出して仲間と関わることで、公私ともにかけがえのない繋がりが生まれていきます。来年で70周年を迎えるこの歴史ある団体は、業界内でも確かな存在感を放ち、地域・世代・業種を越えた多彩な繋がりを生み出し続けています。 ![]() さて、そんな木青連を運営しているのが「常任理事」と呼ばれるメンバー達です。全国8地区を代表する「地区担当常任理事」、広報やコンクールなどの事業を担当する「会務担当常任理事」、そして執行部(会長・専務理事・副会長・会長補佐など)や監事といったメンバーで構成されています。これらのメンバーは、各会団から地区を通じて日本木青連へ1年間出向し、それぞれの役割を担っています。 日本木青連の活動の中心は「委員会」です。令和7年度は10の委員会がそれぞれの事業を推進していますが、今回ご紹介したいのは「広報委員会」。その名の通り、広報活動を担っている委員会です。 今回の「ウッディレター」も、広報委員会が中心となって企画・編集・発信しています。 もともと「ウッディレター」は会員向けの“会報”として、会団や会員の紹介など、やや内向きな情報が中心でした。しかし、「せっかく素敵な活動をしているのに、日本木青連の中にしか情報が伝わらないのはもったいないよね」という声から、今年度は思い切って“外向け”にリニューアル。より多くの方に木の魅力を届けるため、メルマガ形式で新たにスタートしました。 広報委員会の皆さんが総力をあげて、木力いっぱいの記事を準備していきますので、これからの「ウッディレター」にぜひご期待ください。そして、私の会長コラムは…おまけのようなものとして、どうぞお手柔らかに、気軽にお読みいただけたら幸いです。
![]() というわけで、「木力NOTE」、これからもどうぞお楽しみに。
なお、以下に昨年度作成した日本木青連の勧誘チラシを添付しています。日本木青連の活動内容がわかりやすくまとまっていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。会員の皆さまには、勧誘の際にぜひご活用いただければと思います。 |
2025/6/29 21:53 |
委員会活動紹介 第1回 広域連携委員会
![]() ![]() ![]() 調印式:左から3人目が安成全木協理事長、同2人目が久原英司全木協建設統括本部長、同1人目が松井進全木協建設統括副本部長、同4人目が長谷川日本木青連会長、同5人目が松田卓也日本木青連副会長、同6人目が平川典秀副委員長 広域連携委員会委員長の守屋光泰と申します。私たち広域連携委員会は、日本の木材業界の持続的な発展を目指し、全国の事業者間の連携を促進する役割を担っております。 今年度は、特に以下の3つを活動の柱として、社会への貢献に繋がる取り組みを推進してまいります。
1.ウッドトランスフォームシステム商品の開発 2.会員相互BCP連携トライアル 3.全国木造建設事業協会との災害連携協定の強化
これらの活動を通じて、木材の安定供給と利活用を促進し、より豊かな社会の実現に貢献できるよう努めてまいります。
委員会の活動に関するより詳しい内容は、後日、会長のコラムにてご紹介いただける予定です。ぜひご一読ください。
ニュース【日本木青連、全木協との災害連携協定を強化 — 有事の際の木材供給体制を確立】
木造応急仮設住宅建設へ迅速な支援体制を構築
2025年6月13日 一社全国木造建設事業協会事務所(東京)にて日本木材青年団体連合会(日本木青連)は、全国木造建設事業協会(全木協)との間で締結している「災害時における応急仮設住宅建設等の木材供給協力に関する協定書」を改訂し、連携をさらに強化しました。この協定は、大規模災害発生時における木造応急仮設住宅建設の円滑化を目的としており、令和5年の内容から共同訓練の実施など、より実践的な協力体制へと発展しました。 ![]() 2025年6月13日調印式 左から安成信次全木協理事長、長谷川泰治日本木青連会長 今回の改訂により、災害時に全木協から木造応急仮設住宅建設のための木材供給要請があった際、日本木青連の会員企業が主幹事材木店としてハブとなり、木材の安定供給に協力する体制が明確化されました。また、全木協が実施する広域災害共同防災訓練への参加も盛り込まれ、有事の際の連携を確認し、即応性を高める狙いです。
長谷川会長は、「過去の災害対応の教訓を活かし、被災地への迅速かつ的確な復旧支援体制を強化することを目的としています。有事の際に被災地へ迅速かつ的確な復旧支援を行うという業界としての社会的使命を果たすべく、今後も関係機関との連携を深めてまいります」と述べ、本協定の重要性を強調しました。
この連携強化は、日本の木材業界が一体となって災害対応にあたるための重要な一歩であり、被災地の早期復興に大きく貢献することが期待されます。 |