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発行日時 | パイプ名 | 見出し |
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2025/10/6 23:32 |
木青NET
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活動紹介 令和7年9月5日 第3回経営研修会レポート
![]() ![]() こんにちは!令和7年度日本木材青壮年団体連合会、会長補佐としてユナイテッド推進タスクフォースを担当している瀧澤です。9月5日に大阪で開催されました「第3回経営研修会」のレポートをさせて頂きます。 この経営研修会は全3回のプログラムであり、今回は第3回目(最終回)でした。 (第2回のレポートを担当してくれた宮田委員長ありがとうございました)
この経営研修会では「共生社会」をテーマにし、さまざまな人々がすべて分け隔てなく暮らしていくことのできる社会、ともに支え合い、さまざまな人々の能力が発揮されている活力ある社会の実現にむけて、経営者として理解を深め、木材業界だからこそできる解決策を考えるための研修会でした。
そしてこの最終回にご登壇頂いたのが株式会社シーアイ・パートナーズ代表取締役の家住教志さんです。 家住さんは2009年に誕生したお子様に重度の聴覚障害が発覚したのを機に子供の療養や将来を考え、他社にて障害者雇用人事を経験したことで、障害の多くは育成環境の不足した社会構造であることを確信し、株式会社シーアイ・パートナーズを設立しました。 ![]() <右が株式会社シーアイ・パートナーズ代表の家住さん>
障がい福祉業界には、部分的なアプローチでは解決が難しい社会構造上の課題が多く存在しているため同社では「教育」「企業」「医療」の3分野との連携をしています。 そしてこの連携は福祉の枠を超えた社会変革型プラットフォームとして機能するため、利益がでず、赤字経営が続くこの業界でもしっかりとした経営をされています。
私が一番面白いと思ったのがユニークなM&A手法です。通常であればM&Aした会社の社長は解任するか期限を決めて辞めてもらうことが多いかと思いますが、なんと社長はそのままで給料もそのままの状態でM&Aをするというものでした。 そして買収時には株式交換を活用することでキャッシュアウトを抑制し、社長のモチベーションを維持するという手法で次々とM&Aを進めているということです。この方法を使えば日本木青連の中でも面白い連携ができるのではないかと少しわくわくして聞かせて頂きました。 また最後に家住さんが経営する施設も見せて頂きましたが、そこで働く障がい者の方が作成したポスターや動画などのレベルの高さに驚き、弊社でも是非お願いしたいと思いました。
今回で経営研修会は最後になりますが、この3回の経営研修会を終えて講演してくださった3名の皆様には共通して「社会課題の中にはチャンスがある、そのチャンスをしっかりと見極めて事業を見直すことで、新しい道が見えてくる」という考え方があったのではないかと思います。 私たち木材業界も色んな課題が山積みですが、その課題の中にあるチャンスを見逃さずに掴んでいかなければなりませんね。 ![]() <セミナー会場は障がい福祉サービスTECTEC天王寺校でした> |
2025/10/6 23:22 |
木青NET
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【安藤きらり氏コラム】みどりの大使の『木育日記』 第1回
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はじめまして。ミス日本みどりの大使 安藤きらりと申します。東京都出身、現在は社会人として会社に勤務しており、今年で25歳になります。私は2024年1月に開催されたミス日本コンテストにおいて、みどりの大使を受賞し、森林・林業、木材産業に関する様々な活動をしてきました。
ミス日本と聞くと、煌びやかな姿を想像する方が多いかもしれませんが、みどりの大使はそうではありません。全国各地の山に足を運び、アウトドアウェアで活動することがほとんどです。植樹をしたり、チェーンソーの資格を取ったり、実際に山でお仕事をされてる方にお話を聞いたり、日々の活動は発見と学びでいっぱいです。ミス日本みどりの大使には、日本の森林・林業、木の文化の大切さを広く社会に発信し、次世代に対してみどりの魅力を伝えるという指命があります。専門的な知識や特別な経験はありませんが、若者・女性ならではの視点を大切にしながら、日本の森林・林業、木材産業の課題解決に一歩でも近付くよう、努めてまいりました。
ミス日本にエントリーしたきっかけは、"こどもたちの未来を豊かにする"という夢を叶えるためです。学生時代に、保育園や学童保育にてこどもたちの教育に関わるアルバイトを経験し、「実際に触れること」が減少していると気付きました。デジタル教科書、電子黒板、YouTubeの教育コンテンツ等、端末ひとつあれば、何もかも学べる時代になりました。便利になった反面、画面では学べない大切なことが置き去りになっている気がしました。こどもたちが生きる力を身につけるには、実体験を通じて、豊かな感性の基盤を築く必要があると思います。インターネットや電子機器が普及する現代だからこそ、こどもたちが画面に依存せずに、肌で感じる体験を多くしてほしい!そう思いました。
私はこの願いとみどりの大使の使命を実践するべく、みどりとこどもたちの架け橋を目指し、活動に注力しました。
活動を通じて、こどもたちにはたくさんのことを教えてもらいました。切っちゃダメ!と木を抱きしめていた子に森林循環の話をしたら、「木って切ることも大切なんだね」と理解をしてくれたり、樹齢の話をすると、「この木はすごーくおじいさんなんだね!けどよぼよぼしてない!」と言われたり、丸太を見て、「お疲れ様」とトントンしたり、まっすぐなこどもたちの心に、何度も感銘を受けました。
僭越ではございますが、こちらのコラムでは、こどもたちとみどりが触れ合うことによって私が感じたことを中心に、ミス日本みどりの大使の活動を振り返っていきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
![]() 2024年ミス日本コンテストにて ![]() 緑の募金の強化月間初日に岸田元総理大臣を訪問 ![]() 日本木材青壮年団体連合会の全国大会にて ![]() 木育体験プログラムの一環で子供達と木を題材としたダンスをしました |
2025/10/6 23:06 |
木青NET
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【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第6回
![]() ![]() リプレイス大作戦その4~外材、化石燃料以外の代替
・はじめに:木質バイオマスの広がる可能性 前回までで化石燃料の代替を如何に木質バイオマスで実現するかをご説明してきましたが、それ以外にも新たな木質バイオマスの新たな活用方法や既存の木質バイオマス以外の素材のリプレイスが研究、開発、社会実装されてきています。その一部を今回ご紹介したいと思います。
・食料代替 日本の輸入量最大の食料は飼料用とうもろこしで、金額ベースでもたばこ、豚肉に次ぐ3番目の輸入額の作物です。輸入量は1,500万トン、金額ベースでも約6,000億円とかなり大きくなっています。
飼料を木質由来の物にすることで飼料も含めた食料自給率向上への貢献ができそうなのが、日本製紙グループの開発した元気森森です。木材をチップ化し、脱リグニン処理を経て製造されます。廃液は燃料に使えるそうです。
既に家畜飼料として元気森森を活用している畜産業者も存在しており、既に社会実装されている技術、製品です。元気森森の工場を地域に誘致し、林業と畜産業連携を行えば木質バイオマスの地産地消を推進することができ、海外に流出している飼料代金や燃料代金を地域に取り戻すことが可能です。 養牛用飼料 元気森森®|基盤技術研究所(技術紹介)|日本製紙グループ
また、日本製紙グループは食品添加剤のセレンピアフードという製品も製造販売しています。 セレンピア® フード|Sustainable PRODUCTS|日本製紙グループ
他にも木質バイオマスを活用した食料品への転換事例は既に数多く実現されています。 ・木からお酒を造る。→ウッドスピリッツ社、WoodSpirits
・“木材”で香りづけされた調味料。→浅沼醤油、「木を食べる」? “木材”で香りづけされた調味料が新登場 森林と林業を未来へ…老舗しょうゆ店の思い【岩手発】|FNNプライムオンライン
・他にも多くの企業で木のパウダーを食品に混ぜる取り組みは行われています。
古典的な木の食料への転換は木の芽をてんぷらにして食べる事です。私の家でもタラやコシアブラのてんぷらはよく食べます。
・鉄筋コンクリート、鉄骨建築物代替 木材を高層建築物に使えるように集成材、ハイブリッド集成材、CLT材、ハイブリッド建材、・・など多くの技術、製品が開発されてきました。
構法に関しても、例えば接合部分は木造建築の弱点とされてきましたが、山形県の株式会社シェルターのKES構法(日本、米国、カナダで特許取得)により金物を使った構法により強度の高い木造建築が可能になりました。
1995年の阪神淡路大震災の時には73棟のKES構法で建築された木造住宅が被災地にあったそうですが、全て倒壊を免れたそうです。
その後も同社は耐火部材のCOOL WOOD(日本、カナダ、水素で特許取得)や曲線やひねりをもたせた部材のFREE WOODを開発されてきました。
環境負荷の高い鉄鋼製品やコンクリートをなるべく使わず、木造建築に代替するということが重要です。私も所属している三菱総研のプラチナ構想ネットワークでは9階建て以下の建築物は全て木造建築に!と提言しています。都市空間全体を「第二の森林」として機能させる「木造都市」構想です。都市そのものを「二酸化炭素を排出する場」から「二酸化炭素を長期にわたって固定する場」へと変えていくという言い方もできるでしょう。
・新しい建材、内装材、家具、プラスチック代替技術 岐阜県に株式会社Spacewasp(スペースワスプ)というスタートアップ企業があります。この企業は木材や植物廃棄物から樹脂を抽出し、独自の樹脂加工技術を用いて、独自開発した3Dプリンターを使って全自動で内装材、家具、建材を製造します。 ![]() 出典:スペースワスプ社ホームページ
独自開発した3Dプリンターで生産された製品例 出典:スペースワスプ社ホームページ
このように3Dプリンターを使って生産していますから、様々な形状の建材、家具、内装材に活用可能です。例えば、既存の製材所、合板工場、製紙工場で発生する廃材をアップサイクルして新たな価値のある商品を作ることが可能となります。
廃材を有償で引取ってもらっていた企業も有償で売却ができ廃棄物処理されないというメリットがあります。実際に運送会社で発生する木製パレットを有償で引取り、家具や建材に活用され始めています。
・新しいガラス代替技術 アメリカ・メリーランド大学カレッジパーク校に所属する材料科学者Liangbing Hu教授ら研究チームは、より効果的な方法で「透明な木材」を作りだすことに成功しました。
新しく作られた透明な木材は、従来の透明木材と比べて50倍もの強度を持っている、断熱性能が高い、軽いとのことです。
ガラスは製造時に高温を長時間使いますからエネルギー消費が大きな産業です。この技術はガラスを木質バイオマスにリプレイスすることでこの大きなエネルギー消費を抑え、ガラスよりも価値(強度、断熱性能、軽さ)の高い製品を作り出すというものです。
製造方法は簡単で、 1. 過酸化水素を塗布して天日にさらす。1時間程度で白くなります。 ![]() 2. 海洋開発用に設計された透明なエポキシ樹脂を木材に注入し、木材の中にある小さな空間や穴をすべて埋めて硬化させます。木材の中にエポキシ樹脂が充てんされることで、白かった木材が透明になります。この透明化の原理は、白くて不透明なティッシュを水に濡らすと、半透明になって向こう側が透けて見えるようになるのと同じ理屈だと、研究チームは説明しています。
私の調べたところによるとまだ、製品化して販売したという企業は無いようですから、研究機関や行政から支援してもらって製品開発に取り組んでみてはどうかと思います。
・新しい外装材、構造材、刃物代替技術 2018年、ステンレスの3倍も硬い木質由来の材料が先述のガラス代替技術と同じ米国のメリーランド大学の科学者リャンビン・フー(Liangbing Hu)氏が開発しました。
同氏は数年をかけて技術を改良し、かつては製造に一週間以上かかっていた工程を数時間まで短縮することに成功しました。商用化の準備が整うと、彼はその技術をスタートアップ企業InventWood(インベントウッド)に提供します。現在同社は外装材の製造販売に注力しています。
今年の夏より、鋼鉄よりも硬い「スーパーウッド(Superwood)」の生産に取り組み鉄鋼やコンクリートをリプレイスしていく戦略のようです。建築物が排出する炭素の90%は、建設時に使われるコンクリートと鋼鉄によるものであり、スーパーウッドが普及すれば、建築業界にエコロジーな革新をもたらせるでしょう。
InventWoodによると、スーパーウッドは、鋼鉄よりも50%高い引張強度を誇り、強度対重量比では10倍の性能を有するといいます。
加えて、高い防火性能や腐食・害虫への耐性、ポリマー浸透による屋外使用の適性といった特徴も持ち合わせているとのこと。さらに、スーパーウッドは、圧縮処理での色味が凝縮により、高級な熱帯広葉樹のような美しい外観も実現しています。染色を施さなくても、クルミ材やイペ材のような深みのある色合いになる点も注目すべき特長です。
また、刃物への適用も可能でしょう。 ![]() 上記、ナイフが木製であることに注目!
日本には岐阜県の関市のように世界でも有数な刃物産地があります。(世界の3S:関市、シェフィールド、ゾーリンゲン)。木製のナイフを製造し、新たなブランドで高付加価値商品を開発し、世界に展開できたらいいですね。
・最後に 今回は外材や化石燃料以外で私が注目する木質バイオマスへの代替技術を列挙させて頂きました。他にもありますが、経済的地球環境的にインパクトの大きな食料、鉄鋼、コンクリート、プラスチック、ガラス代替製品にフォーカスを当てました。
今後もこうした技術はたくさん出てくると思いますが大切なことはこうした技術を早急に取り込んで自社製品開発に活かす事です。
なかなか研究機関にアクセスできないとか、資金が不足するとか、問題は山積しているでしょうが、現在は研究機関も金融機関も新しいチャレンジには応援していこうという機運が高まっています。
また、セミナーやシンポジウムも毎日どこかで開催されているような状況ですから、こうしたイベントに参加し、関心のあるテーマの講演者と意見交換させて頂ければ意外に簡単に新しいアイデアが実現するかもしれません。 以上、ご関心あれば下記までご連絡下さい。 宮本義昭:メールアドレス:ym00876216@gmail.com
(過去のコラム) 第一回:人手不足対策、地域の空き家問題対策、リフォーム事業拡大 【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第1回 - 日本木材青壮年団体連合会 ・海外人材紹介と定着サービス:フューチャーデザインラボ社のご紹介
第二回:少子化問題と木材産業の成長 【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第2回 - 日本木材青壮年団体連合会 ・中堅中小企業の売上利益拡大を支援:Revitalize社のご紹介
第三回:リプレイス大作戦その1~石炭の代替 【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第3回 - 日本木材青壮年団体連合会 ・林業コンサルティング会社:KOSO社のご紹介
第四回:リプレイス大作戦その2~外材の代替 【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第4回 - 日本木材青壮年団体連合会
第五回:リプレイス大作戦その3~天然ガスと石油の代替 【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第5回 - 日本木材青壮年団体連合会
(所属企業、団体) 株式会社バルステクノロジー 代表取締役社長 兼 株式会社KOSO アドバイザー 兼 日本木材青壮年団体連合会 広報委員会アドバイザー 兼 株式会社Revitalize アドバイザー 兼 株式会社Dione アドバイザー 東京科学大学(旧東京工業大学)基金特別会員 プラチナ構想ネットワーク 法人会員 先進EP研究会 会員 Asagiラボ 賛助会員 東海バイオコミュニティ 法人会員 林野庁 森ハブ・プラットフォーム会員 東京丸の内イノベーションプラットフォーム林業分科会 蔵前バイオエネルギー 正会員
(拙著:代表作) |
2025/9/22 0:26 |
木青NET
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活動紹介 2025大阪・関西万博シンボル 大屋根リングが示す木材の可能性
![]() ![]() ・世界最大の木造建築物・大屋根リング
今年、2025年に開催されている大阪・関西万博。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、158の国・地域、7つの国際機関が大阪・夢洲に一堂に会し、共に未来社会について考えを発信する場として、国内外から高い注目を集めています。
そのシンボルが、巨大な木造建築物「大屋根リング」です。大きさは直径約615メートル、一周およそ2kmに及び、ギネス世界記録にも「世界最大の木造建築物」として認定されています。使用された木材の総量はおよそ27,000m³とされ、その7割をスギ・ヒノキなど日本国産木材で賄っています。 ![]() <写真>2025大阪・関西万博シンボル 大屋根リング(2025年6月 当会会員撮影)
・短工期実現のため建設業界と木材業界が総力結集
この巨大建築を実現するうえで最大の課題は、極めて短い工期でした。2022年7月に受注者が決定し、2025年4月の万博開幕までに、世界でも類例のない規模の木造建築物の設計、木質材料の選定・調達、そして工事を完了させる必要があったのです。
大手建設会社と木材業界は早い段階から協議できる体制を整え、設計・木材調達・施工の各分野で協力を構築しました。その結果、当初計画より1カ月前倒しとなる2024年8月に大屋根リングが開通(全周が接続)し、2025年2月末には竣工・引き渡しが完了しました。
受注者決定から2年7カ月、2023年6月末の着工からわずか1年8カ月で竣工を迎え、無事に大阪万博のシンボルとして供用開始されることとなりました。
この成果は建設事業者の設計・施工・管理能力を示すとともに、短期間で大量の木材を供給しきった国内木材産業の底力を、世界に示すものとなりました。 ![]() <写真>CLTの製造風景(提供:株式会社サイプレス・スナダヤ)
・大規模建築物への木材利用の歴史
日本は古来より木材を建築に有効活用してきました。法隆寺五重塔をはじめ、建築後数百年以上を経た木造建築物が多く現存し、日本が古くから木材を用いた高度な建築技術を有してきたことがうかがえます。
しかし、太平洋戦争期の連合国軍による爆撃で多くの家屋が火災に見舞われ、多大な犠牲が生じた教訓から、戦後復興に際して日本政府は「燃えない街づくり」を掲げました。その結果、建築基準法では非常に高い防火・耐火基準が定められ、大型建築物はコンクリートや鉄骨で建設することが推進されました。
一方、世界では逆の流れが進みました。中央ヨーロッパを中心に、環境負荷の少ない木材で大型建築物を建設する動きが加速し、CLT(Cross Laminated Timber、直交集成板、2025/07/13 木力NOTE 第2回参照)など新しい木質構造材も開発されました。
日本は木材利用に関する技術・文化・資源を有していながら、この世界的潮流に乗り遅れ、大規模木造建築において後進国となってしまいました。しかし、大屋根リングの実績は、この遅れを大きく取り戻すきっかけになったと考えられます。 ![]() <写真>44m(11階建て)純木造高層ビルPort Plus 大林組横浜研修所(引用:日本木材青壮年団体連合会主催、木材活用コンクールWebサイトより) ・大屋根リングが示した木材産業の可能性
日本で最も木材を利用しているのは住宅産業です。木造住宅のみならず、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の住宅でも、内装などに少なくない木材が使用されています。そのため、木材産業は住宅着工戸数に大きな影響を受けます。
住宅着工戸数は1990年にピークを迎え、年間171万戸に達しました。しかし、バブル崩壊後の不況や人口減少により、2024年度にはピークの46%にあたる79万戸まで減少し、今後も減少が続くと予想されています。この動きに連動し、木材産業の経営環境も厳しい状況が続いてきました。
しかし時代は大きく変わろうとしています。環境への意識が高まる中、成長過程で二酸化炭素を吸収し、炭素を固定できる木材資源は「環境負荷の少ない素材」として注目されています。近年では都市部で10階層を超える高層建築物も木造で実現しています。
住宅着工戸数の減少は当面続くと見込まれますが、一方で非住宅の大型建築物に大量の木材が使われる未来が、目前に迫っています。これは大断面集成材工場やCLT工場だけでなく、そこに原木などの資源を供給する素材生産事業者、集成材やCLTの加工を担うプレカット事業者、さらに内装の木質化を支える木工事業者や内装木材製造事業者など、業界全体に波及効果をもたらすと考えられます。
2025大阪・関西万博のシンボルである大屋根リングは、川上から川下、そして建設事業者が一体となって実現した巨大プロジェクトです。ここで示された木材業界の力があれば、日本の木材産業の未来は非常に明るいものとなるはずです。 ![]() <写真>2025大阪・関西万博シンボル 大屋根リング(2025年6月 当会会員撮影) |
2025/9/22 0:07 |
木青NET
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日本木青連ネットワーク紹介 第3回
![]() ![]() 日本木青連の会員企業を「お仕事での連携」を絡めて紹介していくコーナー。 第3回目は石川県よりお届けします。
# 復興への響き〜能登ひばが紡ぐ地域サプライチェーンの物語 ## フルタニランバーを中核とした川上から川下までの連携
1はじめに
令和6年1⽉1⽇に発⽣した能登半島地震は、⽯川県の⽊材業界に深刻な影響をもたらしました。製材⼯場の倒壊、⼭林の⼟砂崩れ、後継者不⾜の深刻化という危機的状況の中で、創業120年の歴史を持つフルタニランバー株式会社(⾦沢市、古⾕隆明社⻑)が展開する「ATENOTE(アテノオト)」は、地域材の新たな活⽤⽅法を⽰しています。また公益社団法⼈ ⽯川県⽊材産業振興協会の理事として、能登ひば⾼付加価値化プラットフォーム「ATE-NET」の開設に中⼼メンバーとして携わるなど、復興と持続可能な林業の実現に向けた希望の光となっています。 ![]() 2フルタニランバーという企業
フルタニランバー株式会社は明治37年(1904年)、船⼤⼯として創業した⽼舗⽊材会社です。⽯川県⾦沢市に本社を構え、現在は5代⽬となる古⾕隆明社⻑のもと、従業員37名で国内外の⽊材を取り扱う総合⽊材商社として事業を展開しています。 同社の特徴は取扱樹種の豊富さにあります。アジア圏、北⽶、豪州、欧州など世界各国と直接取引を⾏い、全国でも随⼀の多品種多品⽬を扱っています。近年は環境問題への配慮から国産材の取扱いを増加させており、IoT技術やRFIDを活⽤した商品管理体制の構築、スマホアプリによる発注システムなど、アナログとデジタルを融合させた⾰新的な経営を⾏っています。 ![]() 3震災の影響と挑戦
令和6年能登半島地震は、県内の林業・⽊材業界に深刻な被害をもたらしました。輪島市の鳳⾄⽊材はじめとする多くの製材所が倒壊し、機械の損傷、原⽊の散乱といった物理的被害が発⽣。さらに⼭間部では⼟砂崩れが多発し、林道が⼨断されて現場への到達すら困難な状況となりました。 能登森林組合によると、技能職員数は約100⼈から現在60⼈まで減少しており、震災による住⺠避難の⻑期化により、後継者不⾜がさらに加速することが懸念されています。 しかし、このような厳しい状況の中でも、フルタニランバーのATENOTE プロジェクトにより 、能登ひばの新たな価値創造を通じて地域復興に貢献する姿勢を⽰しています。 ![]() 4ATENOTE プロジェクトの意義と全国展開への発展
「ATENOTE(アテノオト)」は、⾳楽⽤語の「note(⾳)」に樹種名の「アテ」を重ね命名された地域材活性化プロジェクトです。楽器メーカーと連携し、材料として能登ひばの活⽤を提案しその価値を共有することで、バイオリン、ギター、ベース、ウクレレ、和太⿎、三味線など多岐にわたる楽器が製作され、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正⽂さんやストレイテナーのホリエアツシさんといった著名なミュージシャンとのコラボレーションも実現しています。 ![]() 写真左:ホリエアツシ 写真右:後藤正文
※ストレイテナー ホリエアツシさんと共に能登ヒバエレキギターを製作。2025年8⽉9⽇、終戦から80年を迎えた⻑崎で⾏われたライブイベントなどで活⽤されている。
※ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤正⽂さんが静岡県藤枝市に建築している⾳楽スタジオの内装と本⼈⽤のエレキギターに能登ヒバと古材を活⽤している。
ATENOTE プロジェクトの成功により、需要の創出、さらには⼈材リクルートにも⼤きな効果を発揮しています。
特筆すべきは、BRAHMANのTOSHI-LOWさんが学⻑を務める「幡ヶ⾕再⽣⼤学」との連携です。古⾕社⻑は2024年9⽉に同⼤学の林業部⻑に就任し、震災直後のOAUライブ会場での出会いから始まった⽀援活動は、能登島避難所への物資⽀援、ビーチクリーン活動、New Acoustic Camp 2024での体験型⽊材教育の全国展開へと発展しています。 ![]() 写真左:BRAHMANと組⼿什 写真中央:炊き出し活動 写真右:NewAcousticCamp出展
5県内サプライチェーンの現状と展望
能登ひば⾼付加価値化プラットフォームの中核として2024年2⽉に開設された「ATENET」ポータルサイトでは、「アテ林業・能登ヒバを活かした能登の創造的復興サポーター」制度を運営し、⽯川県内に加えて全国から40を超える組織がサポーター登録を⾏っています。
古⾕社⻑は公益社団法⼈⽯川県⽊材産業振興協会の担当理事として、このプラットフォーム運営の中⼼的役割を担うとともに、⽇本⽊材⻘壮年団体連合会(⽇本⽊⻘連)において令和6年度常任理事、北信越地区⻑、復興委員会実質的委員⻑を兼務し、全国の⽊材業界ネットワークを活⽤した⽀援体制を構築しています。 ![]() ATE-NETフォーラムにて(2025年2⽉)
6まとめ〜持続可能な地域の森の循環の実現に向けて〜
フルタニランバーは単なる材料販売業者の枠を超え、⽯川県の森林資源と⼈々を結ぶ多⾯的な活動を展開しています。幡ヶ⾕再⽣⼤学林業部⻑としての全国的な⽊材教育推進、アーティストとの復興⽀援コラボレーション、⽇本⽊⻘連での復興委員会活動など、古⾕社⻑の多岐にわたる⼈的ネットワークが地域復興の原動⼒となっています。
従来建築材中⼼の⽤途から楽器材への⾼付加価値化により地域材の需要創出と林業の活性化を実現し、⾳楽という⽂化を通じて「⼈と⾃然をつなぐ」理念のもと持続可能な森林資源の利⽤を促進しています。「ATENOTE プロジェクト」は単なる商品開発を超え、能登の⾥⼭⽂化を次世代に継承し、「ATE-NET」は地域コミュニティの復興と持続的発展を⽀える重要な取り組みとなっているのです。
⽇本⽊⻘連の会員同⼠のサプライチェーンにおいても、このような創造的で持続可能なアプローチが、震災からの復興と業界の未来発展の鍵となることでしょう。
株式会社桑⽊ 森⽥ ⾂ |
2014/3/3 17:10 |
木魂21
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「木魂21」移転のお知らせ
![]() ![]() 日頃より当会の活動にご理解とご協力を賜りまして、 日本木青連会員向け情報ページ「木魂21」は http://www.mokuseiren.jp/kodama21/ なお、木青連WEBサイトも「木青NET」として
今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。 |
2013/10/31 15:31 |
木魂21
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第17回木材活用コンクールのご案内
![]() ![]() 第17回木材活用コンクールの募集要項をアップします。以下リンクよりダウンロードいただき、ご確認ください。 ●第17回木材活用コンクール 募集要項(PDF) また、新しい日本木青連公式WEBサイト内にも、詳しいご案内を掲載しております。こちらも併せてご覧ください。 今年は国土交通大臣賞が新設され、従来よりの農林水産大臣賞とあわせて2つの大臣賞です。また各会団長投票による委員長賞も実施しますので、みなさんふるってご応募ください。 |
2013/10/23 13:24 |
木魂21
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平成25年度 第4回理事会の会議資料をUPします
![]() ![]() 平成25年度 第4回理事会の会議資料(協議のみ)をUPします。会議資料を以下よりダウンロードしていただき、各地区にてご確認・ご検討の上、会場までお持ちください。 ●平成25年度 第4回理事会資料 (PDF)
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2013/10/11 11:54 |
木魂21
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2014年木質化カレンダー販売のお知らせ
![]() ![]() この度、日本木青連は木脇25年度会長のスローガンでもあります『つなぐ』をコンセプトに木質化カレンダーを作製しました。 2014年木質化カレンダー【限定800個】 ● 申込書のダウンロード |
2013/9/27 12:29 |
木魂21
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平成25年度 第4回理事会、日本木工機械展のご案内
![]() ![]() 下記要領にて理事会を開催いたします。
□ 日時:平成25年11月9日(土) 9:00~11:00 日本木工工作機械展視察 □ 会議会場 □ 詳細はこちらよりダウンロードをお願いいたします。 平成25年度 総務委員長 川添 恵作 |